[ 機械 ]
(2017/2/3 05:00)
【アルミニウム合金対応射出成形機 ALM450】
「一体どうなっているんだ」―。ソディックの技術陣は進捗(しんちょく)会議のたびに厳しい指摘を受けていた。アルミニウム合金用の射出成形機の開発プロジェクト。成功すれば既存工法の課題を一気に解消できる機械だけに、社内の期待値は高かった。だが、着手から3年、4年経っても完成せず、会議での報告内容は部品に使う素材開発の話にとどまることが多かった。
アルミ合金を射出成形する工法は、実にユニークだ。アルミ造形は、ダイカストマシンによるダイカストが古くからの工法。だが、ダイカストでは機械本体と材料溶解炉が独立する構造上、空気が混ざり生じる鋳巣がつきまとう。鋳巣は製品の強度低下につながるやっかいな存在だ。
ソディックは射出成形機で樹脂製品を作るように、材料を機内で溶かし、そのまま成形しようと考えた。空気が混ざりにくい工法だ。しかし、溶けたアルミは金属を溶かす溶損の性質があり、機内でアルミを保持するのが困難。射出成形機事業部システム技術部の辻慎二郎副部長は「5年の開発期間のうち、ほとんどの時間を費やした」と、技術陣は溶けない素材の開発に没頭、後に独自の新素材をつくりだした。
アルミダイカストには、もう一つ大きな課題がある。歩留まりだ。あらかじめ炉で材料を溶かし、そこから必要分をすくい取るために歩留まり率が悪くなりやすい。ソディック方式では、材料を必要量だけ機内で溶かすため、歩留まりの改善が期待できる。
鋳巣、歩留まりという2大課題を克服する射出成形機。試験機の成果は想定を超えるものだった。ノートパソコンの筐体(きょうたい)を模した金型でテストしたところ、金型のガス抜きの穴からアルミが工場の天井まで勢いよく吹き出したのだ。空気を巻き込みにくく、鋳巣ができにくいことを示す現象だ。もちろん、安全には十分に配慮した上でのテストであり、「開発陣全員が感動した」(辻副部長)瞬間だった。
(六笠友和)
【製品プロフィル】
ALM450は鋳巣の原因である空気の含有率を0.5%に抑え、ダイカストマシンからの工法転換をかなえる。
アルミ材料を機内の溶解シリンダーで溶かした後、射出シリンダーで保持し、金型内に押し入れる構造を採用している。材料は必要量ですむ。炉を加熱し続ける必要がなく、省エネルギーにも有効という。
(2017/2/3 05:00)