[ 政治・経済 ]
(2017/2/9 15:00)
【ワシントン時事】安倍晋三首相とトランプ米大統領の初の首脳会談が10日に迫った。在日米軍撤退すらほのめかした一時のトランプ氏の発言は最近ではすっかり鳴りを潜め、閣僚が相次いで日米同盟重視の立場を表明。とはいえ、数々の暴言で物議を醸してきただけに、会談でどんな言葉が飛び出すか読み切れないのが実情だ。
トランプ氏の「日本たたき」は約30年前にさかのぼる。実業家だったトランプ氏はバブル景気に沸く日本に敵対心を募らせていたようで、1987年9月、米紙に「日本は巨額の防衛費を支払わないことで強い経済を築き上げた」とする意見広告を掲載。「今こそ日本に支払わせ、米国の巨額赤字を解消する時だ」と檄(げき)を飛ばした。
それから約30年。日米関係を取り巻く環境は大きく変化したが、トランプ氏の主張はほとんど変わらなかったようだ。2015年6月の出馬表明の記者会見でさっそく「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京にシボレーの車はない」と対日貿易赤字への不満をぶちまけた。
同8月になると、各地の集会で「日米安全保障条約は不公平だ」などと発言。16年3月の米紙のインタビューでは、日韓両国が経費を全額負担しなければ、駐留米軍の撤退も「いとわない」と踏み込み、その場合は両国の核武装を容認する考えも示した。
さすがに、この発言は各方面から集中砲火を浴びたため、トランプ氏は核武装論を封印。しかし、頻度こそ減ったものの、その後も「公平に負担しないなら、日本を守れない」(第1回テレビ討論会)などと折に触れて発言しており、持論の根幹を曲げたわけではないことは明らかだ。
大統領選後、トランプ氏が公の場で日米の安全保障問題には触れたことはない。代わって目立つのが経済問題に関するコメントだ。
年明けにはツイッターで、トヨタ自動車に「米国に工場を建設するか、国境で巨額の税を支払え」と要求。大統領に就任すると、「環太平洋連携協定(TPP)を離脱し、1対1の協定交渉の道を開く」と宣言し、さらに「日本は何年も通貨安誘導を行ってきた」と日本の為替政策を批判した。
マイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は米誌への寄稿で、安倍首相がトランプ氏に対日防衛義務の確認などを求めれば、取引が好きなトランプ氏はトヨタの投資や円高を条件として求めてくる可能性もあると指摘。会談で具体的な議論を交わすのは「少なくとも現時点では危険な賭けの面が大きい」と分析している。
(2017/2/9 15:00)