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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/1 05:00)
熊本大学発生医学研究所の中尾光善教授らは、細胞の増殖が停止する「細胞老化」を防ぐ酵素「SETD8」を見つけた。ヒトの線維芽細胞を使った実験で、この酵素を遺伝的な操作によって作れなくすると細胞の老化が加速。薬でこの酵素の働きを抑えた場合も細胞老化が進んだ。薬などでこの酵素の働きを制御して正常な細胞の老化を遅らせたり、がん細胞をあえて老化させ増殖を止めたりするなどの応用を見込む。
体を構成する多くの細胞は分裂を繰り返すうちに機能が低下し、やがて増殖が止まる。放射線や紫外線などの物理的ストレスや、薬剤などの化学的ストレスは細胞老化が進む一因。ただ、老化の詳しい仕組みは分かっていなかった。成果は1日、米科学誌セル・リポーツ電子版に掲載される。
SETD8は、遺伝情報が保存されたDNAを巻き取るたんぱく質「ヒストン」に作用。「メチル化」という反応をヒストンに起こし、細胞の増殖や遺伝子の働きを調節している。SETD8が減少した細胞はメチル化が低下。その結果、細胞の老化に関わる遺伝子群の働きが活発になり、細胞の老化が進むことを突き止めた。
老化細胞は増殖が止まる一方、炎症の原因となるたんぱく質を多く分泌するなど活発に活動している。今回の研究により、SETD8が減ると、細胞内の器官である核小体やミトコンドリアの働きが活発になり、たんぱく質の合成やエネルギーの産出が増えることが分かった。
(2017/3/1 05:00)
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