[ オピニオン ]
(2017/3/2 05:00)
2016年度の風力発電の新規稼働量が前年度比ほぼ倍の30万キロワットとなり、11年の東日本大震災前の水準に戻る見込みだ。この勢いを止めないために、コスト低減が求められる。
12年に再生可能エネルギー発電の固定価格買い取り制度(FIT)が始まると、太陽光発電が急拡大した。これと対照的に風車の設置数は後退した。環境影響評価が必要となり、開発に時間がかかるためだ。評価を終えた計画が稼働段階に達し、ようやく拡大基調に入った。
参入者の顔ぶれが増えたことも導入を勢いづかせている。風力発電所は初期の投資額が大きいため、震災前は資本力のある大企業が主体だった。FITで採算を見込みやすくなったことから、自治体や地場企業の参入が相次いでいる。
三重県では津市と伊賀市、中部電力のグループ企業が出資する発電事業会社の風車40基が2月に完成した。総出力8万キロワットの国内最大のウィンドファームだ。秋田県能代市は地元9社と共同で、16年末に17基・約4万キロワットの運転を始めた。
新産業創出の動きも出てきた。導入量全国3位の秋田県では、地元企業が風車の部品を製造しようと勉強会を開いている。県内で稼働する風車は輸入品が多いが、定期的に発生する交換部品の需要を地元で取り込もうと考えている。
すそ野が広がりつつある一方で課題もある。機器と建設、維持にかかる費用で計算すると、日本の風力は米国やブラジルの倍のコストがかかっている。このままでは売れないため、通常の電気代に「賦課金」を上乗せする形で国民が差額を負担し、FITの原資に充てている。高コストの風力発電が増えれば、この国民負担も重くなる。
海外では、すでに4億キロワットの風力発電が稼働している。先進事例をみると、設備の品質向上や保守の充実で故障を減らし、稼働率を上昇させてコストを下げたことが分かる。品質や保守は日本企業の強みのはず。風車メーカーや建設事業者は海外の知見も取り入れて、コスト低減に努めてもらいたい。
(2017/3/2 05:00)