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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/6 14:00)
リチウムイオン二次電池の共同発明者として知られる米テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授らの研究チームが、これまでより安全性が高く、長時間電気を供給できる全固体二次電池を開発した。グッドイナフ教授は94歳と高齢だが、現役の研究者であり、旭化成の吉野彰フェローと並んでノーベル賞候補と言われている。今回の研究でも固体ガラス電解質の組成や特性について指導し、新型電池の開発につながったという。
通常、リチウムイオン二次電池に含まれる液体の電解質は電池の負極と正極との間でリチウムイオンをやり取りする。ただ、急速充電を繰り返すと、電解質中にデンドライトといわれる樹状突起が発生しやすくなり、電池がショートして発火や爆発の原因となる。
今回開発した固体ガラス電解質を持つ二次電池は、こうした心配がなく、電極材にリチウムよりコストの安いナトリウムやカリウムといったアルカリ金属も使えるようになるという。さらにエネルギー密度は現行のリチウム二次電池の少なくとも3倍あり、1200回以上の充放電のほか、寒冷地でEVに使えるよう、マイナス20度Cでも二次電池が機能することを確かめた。全固体電池で60度Cを下回る温度できちんと作動したのも初めてという。
この二次電池をもともと研究していたのは同大シニアリサーチフェローのマリア・ヘレナ・ブラガ氏。彼女はポルトガルのポルト大学時代に固体ガラス電解質の研究を始め、2年ほど前にグッドイナフ教授らと共同研究をスタートさせた。研究成果の特許はテキサス大の技術移転機関が保有する。
グッドイナフ教授はニュースリリースの中で、「電気自動車(EV)がより広く社会に受け入れられるには、コスト、安全性、エネルギー密度、充放電の速度と回数が重要。今回の発見が今日の二次電池が抱える多くの問題を解決するものと信じている」とし、EVや蓄電池への応用に向けて、バッテリーメーカーと共同での開発や試験にも応じる方針。研究論文はエナジー&エンバイロメンタル・サイエンス誌に掲載された。
(2017/3/6 14:00)