[ オピニオン ]
(2017/3/8 05:00)
業界のリーダー企業の人事を巡る混迷に、百貨店という業態の行き詰まりをみる。
三越伊勢丹ホールディングスは7日、大西洋社長の退任を決めた。相次ぐ三越系地方店舗の閉鎖にもかかわらず、業績不振が続いたのが原因だ。合併会社特有の社内事情が作用したことも考えられる。
百貨店の低迷は深刻だ。日本百貨店協会がまとめた2016年(暦年)の売上高は5兆9780億円で、4年連続の減少。1981年以来、36年ぶりに6兆円を割り込んだ。バブル期のピークだった91年に比べると、ほぼ4割も減少している。
日本の百貨店の歴史は、1905年(明38)1月2日に三越が新聞各紙に「デパートメントストア宣言」広告を掲載して始まった。三越は戦後も小売業界首位として君臨してきたが、72年8月にスーパーのダイエーに追い抜かれた。一方、バブル崩壊後の2003年、弱体化していた新宿・伊勢丹本店「男の新館」を、ブランドショップを核とする箱型から壁を取り払った“自社編集型”に変革し、新たな百貨店のあり方を示したのが現社長の大西洋氏だった。
“三越の伝統”と“ファッションの伊勢丹”を融合する08年の経営統合により、名実ともに業界のリーダーの座を固めた。石塚邦雄会長が初めて経団連副会長に選ばれ、消費喚起策である「プレミアムフライデー」の推進役にもなったが、その同社さえ業績低迷に陥っている。
人事の背景はともかく、本質的な問題は百貨店という業態そのものにある。かつての百貨店は「空も売る」と謳い、地下の食品売り場から屋上の眺望までを集客の材料とする“夢の魔法箱”として輝いていた。よそ行きの特別な空間を演出することにコストをかけ、それに見合う収益を得ていた。
半面、利益の中心となる婦人服、服飾などの売り場は、いまだにメーカーや商社が商品と販売員をセットで派遣する委託販売方式を脱せずにいる。百貨店自らが在庫リスクを負わないという古い業態の見直しが急務ではないだろうか。
(2017/3/8 05:00)
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