[ オピニオン ]
(2017/3/9 05:00)
東日本大震災から間もなく6年。東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は難航を極めている。避難を余儀なくされた周辺住民の方々の生活再建の遅れも大きな課題として残る。
一方でこうした負の遺産を反省材料としつつ、より安全な原子力利用を考えていくのが我々の世代の務めである。新技術の開発、安全確保、そして廃炉作業と除染など、産業界への期待は大きい。
東芝が海外の原発事業の巨額損失で経営危機に陥っている。原子力事業に向けられた国民各層の視線は、ますます厳しくなっている。日本の電力会社の関係者は「国内の工事では、あんな巨額の損失は出ないと思う。それでも(世論の悪化を)憂慮している」と話す。
東芝の経営危機を理由に、日本の原発事業の将来性を悲観するのは適切でない。そもそも安倍晋三政権の重要政策の一つである原発輸出の主役は、東芝の米子会社ウエスチングハウス(WH)が開発した新型加圧水型原子炉「AP1000」だ。
日本勢では、日立製作所と三菱重工業・仏アレバ連合がそれぞれ海外の原発建設を受注・内定している。ただ個別にみると実際の操業まで難しい問題を抱えている。一方、2016年11月に原子力協定を結んだインドの原発建設計画の候補としてAP1000が有力視される。
AP1000に代表される加圧水型原子炉には豊富な稼働実績がある。米軍の原子力潜水艦と空母も、すべてこの方式だという事実は、新規導入を検討する新興国に信頼感を抱かせるはずだ。コスト管理さえしっかりすれば、原発事業には十分に将来性がある。
日本国内だけをみても、原発事業の必要性は揺るがない。そもそも福島の廃炉作業も、東芝はじめ原発各社を抜きには進められない。
原子力開発の実績も技術力も日本の産業力の貴重な“資源”である。その価値を適切に査定することが必要だ。日本の原発事業を今後も着実に進めていくために、安全確保にもう一段の努力を傾けたい。
(2017/3/9 05:00)