[ 商社・流通・サービス ]

迷走する百貨店(上)「都心店頼み」限界−構造改革、社員に負担も

(2017/3/8 05:00)

  • さまざまな改革を進めた三越伊勢丹ホールディングス(伊勢丹新宿本店)

  • 三越も苦戦が続く

百貨店業界の混迷が深まっている。国内最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)は7日、大西洋社長(61)が31日付で辞任すると発表。仕入れ構造やバーゲン時期など多くの改革を進め、2016年5月には日本百貨店協会の会長にも就いた大西社長の突然の退任。何があったのか。

(江上佑美子)

近年、百貨店業界はショッピングセンター(SC)やeコマースとの競合や、訪日外国人客による免税売上高の減少で苦境に陥っている。同業のJ・フロントリテイリングや高島屋が不動産業での収益確保に活路を見いだす一方、三越伊勢丹HDは今も売上高の9割以上が百貨店業だ。

同社は16年9月に三越千葉店(千葉市中央区)など2店舗を閉店することを発表。同11月、大西社長は17年秋から19年3月末にかけ、広島三越(広島市中区)など4店舗で抜本改革を進める本格的なリストラの方針を示した。都心店の売り上げで地方・郊外店の不振を補う構造に、限界がきている表れだった。ただ大西社長が「投資を集中する」とした都心店も苦戦している。16年4―9月期の売上高は伊勢丹新宿本店が前年同期比3・7%減、三越銀座店が同8・2%減だった。

一方で注力したのが「多角化」だった。1月にエステ会社を傘下に持つSWPホールディングスを買収。2月にはシニア向け海外旅行の企画会社を子会社化する方針を示したが、関係者からは「迷走している」との声も挙がっていた。さらに成果を出す前の大西社長の退任に、戸惑いも広がっている。

同社は差別化戦略として、SPA(製造直販型小売業)戦略を進めてきた。11年に発売した婦人靴「ナンバートゥエンティワン」は累計で6万足を販売するなど成功例も見られる一方、急激な改革に社員からは不満の声も挙がっているという。

三越と伊勢丹が経営統合してから9年。いまだに社内には「三越出身」「伊勢丹出身」の意識が根強く、待遇面の違いもあったとされる。大西社長、杉江俊彦次期社長(56)はともに伊勢丹出身。三越出身の石塚邦雄会長(67)も6月に開催予定の定時株主総会で会長職を退任予定で、さらにリストラ策を出す前の痛み分けとの見方もある。

大西社長がまいた種は実を結ぶのか。再生に向けて新たなモデルを描くのか。杉江次期社長は大きな宿題を抱えている。

(2017/3/8 05:00)

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