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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/17 05:00)
物質や電磁波を激しく放出する銀河の中心には、二つのブラックホールが対になった「バイナリーブラックホール」(BBH)があると考えられている。
首都大学東京システムデザイン学部の佐原宏典教授らは、BBHを探査する超小型衛星「ORBIS」(オービス)のプロジェクトを進める。BBHが放出するX線を検出できれば、BBHの質量や動く軌道の半径を推定できる。佐原教授は「銀河の成長を解明する手がかりになるのではないか」と期待する。機体の完成は2018年3月の予定だ。
BBHの探査を目的としたミッションは初めて。ミッションではBBHからのX線を観察するため、同じ方向に検出器を向け続ける必要がある。このため、一つのミッションに特化した超小型衛星を用意し、BBHの観測を可能にした。大型観測衛星では複数のミッションを相乗りさせるのが普通のため、BBHだけを調べることが難しかった。
衛星の大きさは50センチメートル角の立方体で質量は50キログラム。単結晶シリコンで作製したミラーでX線を集光できる検出器を搭載する。熱によるノイズを減らし、X線の小さな信号を逃さないため、衛星内部ではX線検出器のみがマイナス90度Cになるように設計した。
開発による知見はBBHの観測だけにとどまらない。佐原教授は「新天体探査など従来できなかった観測に超小型衛星がどんどん活用できるのではないか」と期待する。
(冨井哲雄)
(金曜日に掲載)
(2017/3/17 05:00)