[ オピニオン ]
(2017/4/6 05:00)
安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と位置づけ、自身が議長を務めた「働き方改革実現会議」で「同一労働同一賃金」の実現や長時間労働是正など働き方改革実行計画案が示された。戦後日本の労働慣行や企業風土の改革を迫る内容で、早期の法制化、制度導入を期待する。
実行計画案を受け、政府は厚生労働省の労働政策審議会での審議を経て法制化作業を進める。労働基準法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法など関連法の改正法案を国会に提出。準備・周知期間を設け、2019年度にも段階的に施行する方針だ。
電通、ヤマト運輸などの長時間労働が社会的な問題となっている中、1947年の労働基準法制定以来、初めて残業に罰則付きの上限規制が導入される。
現行法は労働時間を原則「1日8時間、週40時間」とし、残業させるには労使が労基法に基づく「三六協定」を結び、その上で上限は「月45時間、年360時間」などと定められている。しかし厚労相告示であるため罰則はなく、労使が特別条項を結べば事実上、経営側は青天井で残業を命じることができる。
新たな残業規制では、三六協定での残業時間の上限を「月45時間、年360時間以内」と規定した上で、罰則付きの特例として「月平均60時間、年720時間」規制を設けた。
調整が難航した繁忙期の上限規制については、繁忙期の月上限特例措置「月100時間」を「以下」とすべきだとした榊原定征経団連会長に対し、連合の神津里季生会長は過労死の労災認定基準の残業時間の月100時間超と同程度であることなどから強く反発。安倍首相から譲歩を要請された榊原氏がこれを受け入れ、「未満」となった。
現在、規制の適用除外となっている建設、運送両業についても施行後5年後の見直し時期に適用する。ただ、両業とも慢性的な人手不足に悩まれている。20年の東京五輪に向け、人手不足はさらに深刻になろう。のど元ならぬ五輪が過ぎれば、との姿勢での適用先延ばしでは抜本的な働き方改革にならない。
(八木沢徹)
(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)
(2017/4/6 05:00)