[ オピニオン ]

【電子版】論説室から/財政健全化計画、修正の時期に-将来不安払拭し内需喚起を

(2017/4/13 05:00)

政府は6月をめどに経済財政運営の基本方針「骨太方針2017」をまとめる。2020年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス、PB)を黒字化する財政健全化計画と、デフレ脱却による経済再生を両立する道筋を示せるかが焦点になる。ただ政府は実質2%以上の高い成長率が継続しても20年度のPB黒字化は実現できないと試算している。経済成長による税収増に依存した現状の財政健全化計画は限界を迎えつつあり、懸案の個人消費を喚起する上でも同計画を修正する必要がある。

内閣府の試算によると、中長期的に実質2%以上、名目3%以上の高い経済成長率が継続する「経済再生ケース」でも、20年度に8兆3000億円のPB赤字が残ると見通す。同試算は15年度に0・8%だった潜在成長率が20年度に2・0%へ、0・3%だった名目長期金利が2・6%まで上がるという“高いハードル”をクリアすることを前提とする。構造改革が進展し、日銀の金融緩和にも終止符が打たれた状況だ。

こうした前提条件に基づき、内閣府は20年度に名目国内総生産(GDP)613兆6000億円を達成し、安倍晋三政権が掲げる600兆円目標をクリアできると予測する。だが、この高成長をもってしても20年度に多額のPB赤字が残るというのが内閣府の試算である。

安倍政権は「経済成長なくして財政健全化なし」を経済財政運営の基本方針とし、業界の既得権益や有権者の負担増につながる歳出改革には二の足を踏んでいるのが実情だ。だが政府は17年度の実質GDP成長率を1・5%程度と「経済再生ケース」より低く予測しているほか、この予測もトランプ米政権による政策不確実性や欧州の政治リスクといった下振れ懸念がくすぶっている。歳出抑制よりも税収増に依存した財政健全化計画には危うさがつきまとい、個人消費の回復力さえ鈍らせている側面がある。

なぜ個人消費がいつまでも回復しないのか-。賃上げやプレミアムフライデーといった対処療法では経済の好循環は回り始めないだろう。政権は画餅ではない財政健全化計画に練り直し、家計の将来不安を払拭することが求められる。社会保障の持続可能性といった不安を取り除かない限り、家計の節約志向を是正するのは難しい。社会保障を中心とした一段の歳出抑制を進めつつ、働き方改革や教育改革を通じた所得拡大策を講じ、内需を喚起することが政権には期待される。

遠回りのようでも、政権はこれら施策を中長期の視点で積み上げ、日本経済の新たな成長軌道を描いてもらいたい。

(神崎正樹)

(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)

(2017/4/13 05:00)

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