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[ 科学技術・大学 ]
(2017/4/23 05:00)
人間の新生児の血液に年をとったマウスの脳の機能を改善する効果があることが、米スタンフォード大学の研究で明らかになった。効果をもたらすと見られるたんぱく質も今回特定しており、将来、アルツハイマー病をはじめとする加齢疾患の治療に役立つ可能性がある。
研究を行ったのは、スタンフォード大学のトニー・ワイスコーレイ教授(神経科学)、ジョセフ・カステラーノ博士らのチーム。同じ研究室により、若いマウスの血液を高齢マウスの血管に注入し脳機能が若返った成果はこれまで報告されているが、若い人間の血液が同じような効果を持つことを実証したのは初めて。19日付の英科学誌ネイチャー電子版に詳細が発表された。
研究チームではまず、人間の若者(19~24歳)、高齢者(61~82歳)、および新生児の臍帯血に含まれる血漿を、免疫機能を無くした別々の高齢マウスの血管に注入し、記憶や学習機能を見る迷路実験などを行わせた。その結果、臍帯血の血漿を4日ごとに2週間与えたマウスの成績が最も優れ、それらの脳を解剖したところ、記憶や空間学習能力を司る海馬の遺伝子が、ニューロン(神経細胞)の接続を増やすよう活性化していた。
次に、臍帯血の血漿中に含まれる66種類のたんぱく質について、高齢マウスでの比較実験を行い、「TIMP2」という関与たんぱく質を特定。高齢マウスにTIMP2だけを与えても記憶・学習機能が向上し、逆にTIMP2抜きの臍帯血の血漿では効果が見られなかった。ただ、TIMP2がなぜこうした効果をもたらすのか、そのメカニズムはわかっていない。
成果についてはスタンフォード大学の技術移転機関が特許を申請済み。さらにワイスコーレイ教授が共同設立者となって、研究成果を実用化するためのバイオテクノロジー企業、アルカヘスト(Alkahest、カリフォルニア州サンカルロス)を2014年に設立。2015年にはスペインの大手ヘルスケア企業、グリフォールズがアルカヘストの株式の45%を保有する資本業務提携を結び、2社共同で高齢化による認知機能低下を治療する血漿ベース薬剤の開発を進めている。
(2017/4/23 05:00)