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[ エレクトロニクス ]
(2017/5/2 05:00)
ルネサスエレクトロニクスが自立した成長に向け、第一歩を踏み出す。約69%を出資する官民ファンドの産業革新機構は、2012年から続いた構造改革に一定の評価を下し「いつでも株式を売却する準備がある」との姿勢だ。ただ規模を縮小して経営を立て直したルネサスに対し、競合相手は大規模なM&A(合併・買収)を繰り返し肥大化している。国際競争の荒波を自ら乗り越えるだけの体力と戦略が必要になる。(政年佐貴恵)
「日本独自の唯一のマイコンメーカーとして、必ず勝ち残らなければいけない」―。4月に開かれた自社展示会で、呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)はこう宣言した。
ルネサスは経営危機に陥った12年以降、工場の閉鎖や人員削減など厳しい構造改革を実施してきた。12年3月期の営業損益は568億円の赤字を計上したが、16年12月期には実質的な営業利益が約780億円(営業利益率12・2%)まで回復。約3200億円を投じた米インターシルの買収も完了し、17年12月期は成長路線へとシフトする1年目になる。
一方、売上高は発足時と比べ、およそ半分まで減った。調査会社によると、16年のマイコン市場の売上高ランキングでは、米フリースケールセミコンダクタを買収した蘭NXPセミコンダクターズがルネサスを抜いてトップになった。さらに同年には、そのNXPを米クアルコムが買収することを表明。業界を主導するプレーヤーが目まぐるしく入れ替わっている。
また半導体関連業界の再編の動きは、ルネサスが力を注ぐ自動運転の分野でも起きている。3月には米インテルが、イスラエルの自動運転向けセンサー大手、モービル・アイの買収を決めた。豊富な資金力を武器に海外勢が市場を席巻しており、ルネサスが成長できる余地が狭まっている。
産業革新機構は改革の進展状況を評価し、保有株式のうち2割程度を売却する方針だ。「どこかの傘下ではなく独立経営を(したい)」という呉社長の意向に対し、革新機構の勝又幹英社長は「機関投資家などに株式を保有してもらうのが、グローバルのトレンドだ」と応じる。
ただ、業績が回復したのは「リストラによる成果であり、革新機構の投資(による効果)ではない」(若林秀樹東京理科大学大学院教授)との指摘もある。競合に比べると規模や資金力で劣るルネサスは成長投資を確保するため、将来的な公募増資も視野に入れる。呉社長は「買収先の候補リストは常に複数ある」とし、資金力を高めて積極的に買収戦略を進め、競合に対抗する構えだ。
革新機構が2割程度を売却しても出資比率は5割近く残る。革新機構の庇護(ひご)から抜け出し、真の自立した企業に変貌するには、成長の種をどれだけ仕込めるかがカギになる。
(2017/5/2 05:00)
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