[ ロボット ]
(2017/5/5 05:00)
毎週発行される雑誌の付録を集めると「何か」ができあがるパートワーク(分冊百科)。講談社とデアゴスティーニ・ジャパン(東京都中央区)が、分冊百科で作る人型コミュニケーションロボットを相次ぎ発刊する。講談社は鉄腕アトム、デアゴスティーニは人気シリーズ「ロビ」の進化版だ。それぞれどんなものでどんな楽しみがあるのか―。(石橋弘彰)
■家庭にアトム
【周年記念で創刊】
講談社と手塚プロダクション(同新宿区)、富士ソフト、NTTドコモ、VAIO(長野県安曇野市)の5社は、手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」の世界観をベースとした家庭用ロボット開発や普及を進める「ATOM(アトム)プロジェクト」を開始した。今年は手塚治虫の生誕90周年。さらに講談社の創業110周年でもある。それらを記念してのプロジェクトだ。
その第1弾が分冊百科「コミュニケーション・ロボット 週刊鉄腕アトムを作ろう!」となる。分冊百科の発行を講談社が担当。手塚プロはキャラクター監修、富士ソフトは同社のロボット「パルロ」のノウハウや人工知能(AI)技術、NTTドコモは自然対話AI技術、VAIOが基板製造と組み立て代行をそれぞれ担う。
週刊鉄腕アトムは4月4日に創刊した。事前予約の状況は好調だったという。全70号で全て集めると18万4474円(消費税別)になる。できあがるアトムは身長約44センチメートルで重量が約1400グラム。胸に画面を備える。18カ所が可動し、二足歩行や踊り、カメラによる顔認識、音声対話などの機能を備える。インターネットを介したクラウドサービス(月額1000円の予定)を利用すると、分からない言葉の認識や、対話を重ねることで会話力を成長させることができる。
顔認識では、人の顔を見分ける。顔写真やニックネームを12人登録でき、会話の内容や丁寧語の使い分けをする。液晶画面には絵を映し出せて絵本の読み聞かせができる。子供向けには朝日小学生新聞と連携する予定だ。
■最新「ロビ2」
【6月に第2弾】
デアゴスティーニ・ジャパンが6月6日に創刊する分冊百科「週刊『ロビ2』」は全80号で、全号集めると17万1327円(消費税込み)になる。組み立て代行サービスも用意した。13年に創刊して約15万体を世に出したベストセラー「ロビ」の進化版となる。ロビ2は家族の顔を覚えてくれる、誕生日や記念日も教えてくれる、定期的に送られてくるメールマガジンで機能が進化する、といった機能が増えた。カメラを備えて笑顔を見分けて逃さず撮影してくれ、マイクロSDカードに保存できる。
ロビ2は身長約34センチメートルで重さが約1キログラム。幅は16センチメートル。7歳の男の子という設定で、ロビ同様ロボットクリエイターの高橋智隆氏がデザインを手がけた。
【“相棒”付き】
ロビ2をサポートするやじろべえのようなロボット「キューボ」も分冊百科に付属する。ロビ2との連携で、英語を使ったコミュニケーション、絵本を読む、ボードゲームで遊ぶ、ロボット同士で会話する、といったことができるようになる。
ロビ2がコミュニケーションロボットの理想型にどれだけ近づいたのか。高橋氏に「いま5合目。7合目あたりに難所がありそう」とまだまだ道のりがあるとの認識だ。音声対話など機能の進化が求められるようだ。だが、ロビ2は最先端に位置することは確かだという。デアゴスティーニによると20万体の販売が目標だ。
■顔認証、登録数は互角−発刊相次ぎ 市場盛り上げ
【「好み」の問題】
果たして集めるならどちらが良いか、となると「好み」の問題になる。価格もできあがる時期も大差がないためだ。デザインは、鉄腕アトムが好きならアトム、高橋氏デザインのロボットが好きならロビ2を選べば良い。完成すると毎日付き合うものなので、外観は重要となる。
機能面では、インターネット接続の有無が違う。アトムはNTTドコモの自然対話AI技術を使うと多彩な対話が可能。使えば使うほど進化する。ロビのシリーズはネットを使わず、QRコードで機能を進化させる。デアゴスティーニによると、「盛り込む機能が驚きを与えられるか、価格を上げてしまわないか、を判断基準にしている。低価格に抑えるにはこなれた技術を組み合わせて楽しさを演出する方が良い」という考え方だ。ネットを使わなくても約3000種類の会話を楽しめる。
顔認証では、登録できる人の数はほぼ一緒。ロボットの動きに関しても両者の差異はさほどなく、細かい機能が異なる。ロビ2は初代ロビとの連携が可能、キューボとも掛け合いができてにぎやかといった具合だ。アトムは胸の画面が特徴で、映像を使った楽しみを与えられる。
同時期に発刊することもあり、世間では「対決ムード」と見られる両者だが、当事者はそうでもない様子。関係者は「分冊百科のロボットが話題となり、盛り上がってくれれば良い」との意見。競いつつ市場を活性化していきたい、という考え方のようだ。
(2017/5/5 05:00)