[ オピニオン ]
(2017/5/4 05:00)
特定の技術分野に関する「専門人材」の確保が危惧されている。産業界は将来の事業運営に不可欠な人材育成に真剣に取り組むべきだ。
三菱マテリアルは4月から、京都大学大学院工学研究科に寄付講座として「非鉄製錬学」を開設した。5年間で1億5000万円を寄付する。単位認定科目として院生40人を教育するほか、基礎研究の実施、社会人向けウェブ講座、高校生向け実験教室などを提供する。
講座を設けたのは、非鉄製錬分野の専門人材が枯渇する恐れがあるためだ。93年に全国で21大学4高専60人だった非鉄製錬分野の教授は、9大学16人に激減したという。
だが、循環型社会を目指す日本にとって、非鉄製錬技術や資源のリサイクル技術に精通した人材は将来も欠かせない。このため、JX金属が12年から東京大学で開設する同様の寄付講座とも連携、企業の垣根を越えて人材育成に取り組む。
日本電産も4月から、環境負荷を低減するため、モーターの省エネ化などを研究する寄付講座を京大工学研究科に開設した。5年間で2億1100万円を寄付する。永守重信会長兼社長は「モーターの研究開発人材を多く輩出してくれることを期待する」と話す。
いずれも専門人材不足への対応には、自らの投資も必要だという判断である。先端研究だけでなく次世代の人材育成を後押しすることが競争力を高める基礎であり、社会にとってプラスになる。
産業界は人手不足に直面している。だが単なる「人員不足」「労働力不足」は、女性や高齢者の活用、自動化・ロボット化IT化、さらには外部委託などで補うことは可能だ。しかし、将来の事業を左右する中核的な専門人材は、すぐには確保できない。
若年人口の減少は大学院の専攻や定員に影響し、事業に直結する専門分野を学ぶ学生は限られてくる。この際、自社にとって重要な専攻が大学でどのような状況にあるか、企業として把握しておくべきではないか。
(2017/5/4 05:00)