[ オピニオン ]
(2017/5/12 05:00)
日本は食料をはじめ多くの資源を輸入に頼る。輸入資源を加工して付加価値を高めるモノづくりが“お家芸”だ。だが新興国の台頭により、そのビジネスモデルに陰りも出ている。
これに対し、京都大学教授の矢野浩之さんは「日本は資源輸出国になり得る」と言い切る。海外で評価が高まる果実や鮮魚など生鮮食品ではなく、矢野さんらが産学官共同で取り組むセルロースナノファイバー(CNF)の話だ。今や航空機の素材に使われるまでに成長した炭素繊維に続く、新素材である。
原料は木材パルプ。それをナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)まで細かく解きほぐし、樹脂と混ぜ合わせる。鉄鋼の5倍以上の引っ張り強度を持ちながら、5分の1の軽さを備え、自動車などを軽量化する素材と期待される。
低コストな製造法「京都プロセス」を開発し、昨春に京都府宇治市の京大キャンパスにテストプラントを完成した。年産能力は1トンと小規模ながら、パルプからCNF強化樹脂を一貫製造できる。
6月には、日本製紙が年産能力十数トンの実証生産設備を稼働する運びだ。「裏山の木から自動車がつくれる時代が来るかもしれない」。京都盆地を囲む山々の緑を見ながらそう考えた。
(2017/5/12 05:00)