[ トピックス ]
(2017/6/2 05:00)
《インタビュー/三菱日立ツール(幹事会員)社長・増田照彦氏》
企業ブランド、独自性を鮮明に―「心あるモノ」を扱い「心ある商品」を届ける
グローバルな経済環境の変化や、資源・エネルギー問題、環境問題、人口問題、新興国の台頭など、わが国のモノづくり産業が直面する問題は厳しさを増している。さまざまな制約を乗り越えるために、産業界も各企業にもイノベーションが求められる。大きな変革の先には「新たな日の出」が待っている。モノづくり日本会議会員企業のトップに「モノづくりのこれから」を聞く。
―今月19日から企業ブランドを「MOLDINO(モルディノ)」に改めました。
「モルディノは、金型のMOLD(モールド)+DIE(ダイ)と、INNOVATION(イノベーション)から名付けた。当社の特徴はもともと『金型に強い』だったが、近年『難削材に強い』へと広がってきた。ただ、難削材は自動車、航空機、医療機器などの分野にも関係し、戦線が広がりすぎる。三菱マテリアルのグループ会社になったが、同社とは協業ではなく、切磋琢磨(せっさたくま)。そこで自分たちが存在感を示すため、金型を中心に据え、顧客の要求の一歩先を行く加工イノベーションを提供する姿勢をブランド名に込めた」
「ロゴの赤と青の配色は今までの当社の良さを引き続き踏襲していくことの表明。MはモルディノのMと、三菱日立ツールのM。顧客とともに、サプライヤーも交えた三者が手に手をとって進んでいく姿を表現した。切削工具の先端、技術力を研ぎ澄ませて、とがっていく決意だ」
―企業ブランドの独自性の鮮明化を図ったのですね。
「ユーザーには今後も独自性を出していくから安心してほしいという意味だと受け取ってほしい。就任当初、開発でシナジーを出せないか社内で諮ったら即座に強く反対されたが、それがうれしかった。その気持ちが昨年の工作機械見本市に二ケタの新製品を出せたことにつながっている」
「先月、三菱マテリアルがグループ会社約100社の中で最高のパフォーマンスを示した会社に与える『パフォーマンス・オブ・ザ・イヤー2016』を獲得した。その表彰の席で『当社はこんなもんじゃない。もっととがっていく』と表明したところだ」
―経営に当たり大切にしていることはなんですか。
「『ものに心ありて、まして人』と『楽しくなければ人生(会社)じゃない』という二つの言葉に尽きる。モノには全て心がある。製造現場で心のあるモノを扱い、営業は心のある商品を顧客に届ける。工場と営業が工具を仲介に、互いに敬愛する会社にしていきたい。モノにすら心があるのなら、まして人は心の塊。相手を尊重することが大切だ」
「『楽しい』とは何か。何か目標を決めてそれに向かって日々人智を尽くすことで『このままやれば到達できそうだ』と感じ、隣の人もその人なりの目標に向かって前に進んでいる。それを見て『お互いよかったね』と思うこと。それが本当の『楽しい』だろう。社員にはこの2点を繰り返し話している」
―技能継承についてはいかがですか。
「『討論会』の文化がうまく機能している。ノウハウの伝授が必要な現場でのテーマ討論会は若者にとって悩みを解決する相談会になる。さまざまな職場、職種から参加する開発討論会もある。品質会議は日立グループ伝統の落ち穂拾い会議。営業を起点に失敗の発表から議論する。発表が目的ではない『討論会』が技能継承、人材育成の場になっている。これはよい伝統だ」
―モノづくりについての考えを聞かせください。
「私自身はエンジニアではない。三菱金属(現三菱マテリアル)入社直後の講義で、超硬合金はタングステンとコバルトからできていて、タングステンだけでは形にならず、接着剤役のコバルトがあって初めて超硬合金として成り立つことを聞いた。その時に『自分はコバルトになろう』と心に決めた。仕事は生産管理的な部署だったので、営業と工場のコバルト役、開発と製造のコバルト役。『コバルト役はおもしろい』というのが、私のモノづくりの原点だ」
「自分の役割は、人と人をつなげること。それにはどう説明すれば動いてもらえるかをいつも考えてきた。それは自分が技術者ではなかったからだ」
《モノづくり現場見学》
早大・藤田ゼミ、岡村製作所生浜事業所を訪問―経営学の基礎を体感
モノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)は23日、早稲田大学商学部の藤田誠ゼミナールと連携し、工場見学を実施した。働き方改革や健康経営で注目を集めるオフィス用チェアを開発・製造する岡村製作所追浜事業所(神奈川県横須賀市)を学生が訪問。実際の生産現場を見学することで、モノづくりに対する見識を深めた。
藤田教授は「経営学の源流の一つは生産現場の管理にあるため、生産現場の見学は、経営学の基礎を体感することに他ならない」との考えから、ゼミナールで毎年さまざまな工場を見学している。
今回訪れた岡村製作所追浜事業所はオフィス用チェアや公共施設のベンチをはじめ、特殊車両用のトルクコンバーターやトランスミッションなどを開発・生産している。同事業所はオフィス用チェアを一日数千台生産することができ、国内最大規模の生産能力を備える。また、技術技能訓練センターを整備し、高品質なモノづくりを支える人材の教育・育成に注力している。そこで訓練を受けた技術者は、技能を競う大会でも高い成果を上げている。
今回の見学会ではまず、岡村製作所の歴史や製品、技術などについて説明を受けた後、実際の生産現場を見学。学生は金属加工や溶接ロボット、組み立てライン、プラスチック成形など、人とロボットが作業を行う生産工程を間近で見た。その後、事務所に移動し、仕事の生産性向上や従業員の健康などに貢献するオフィス環境について学んだ。見学会の後には質疑応答の時間が設けられ、製造業の人事・品質管理、国際展開などから仕事のやりがいについてまで、学生からさまざまな質問が飛んだ。
参加した学生は「身近な製品がどのように作られているのか知ることができて勉強になった」や「機械化・自動化が進む中で、人の手作業を見ることができて良かった」と振り返る。また、岡村製作所の担当者も「学生に企業と製品に対する理解を深めてもらえる機会となった」と評価している。
今回の工場見学について藤田教授は「金属加工、溶接、組み立てなど、すべての生産工程を見学できたことは、学生たちにとって大変貴重な経験になった」と成果を強調。学生がモノづくりに対する興味と理解を深める機会となった。
《ネイチャー・テクノロジー研究会》
第5回2030年の「心豊かなライフスタイル」コンテストを開催
―ワクワクどきどきする未来の生活を描いた作品を募集
モノづくり日本会議のネイチャー・テクノロジー研究会は「第5回2030年の『心豊かなライフスタイル』コンテスト」を開催する。「想像しよう ときめく未来の暮らしかた」をテーマに、ワクワクドキドキする心豊かな未来の生活を描いた作品を募集している。環境・エネルギーの制約が厳しさを増す2030年を想定し、我慢することなく生活できるライフスタイルを描いてもらう。
■開催趣旨=世界各国で都市化が進み、地球環境への負荷が増大してきており、2030年には資源やエネルギー、水、食料など、人が生活する上で必要なもののリスクが最大化するといわれている。豊かに暮らすためには厳しさを増す環境制約を考慮した上で、未来のライフスタイルをどうデザインするかがカギとなる。
ライフスタイルコンテストは応募者が描いた未来のライフスタイルを通して、新しい社会のあり方を模索する。
■募集テーマ=気候変動、高齢化、労働人口低下などの厳しい環境制約の中でも、ワクワクドキドキ心豊かに過ごすことのできる未来のライフスタイルを描く。作品は、描かれるライフスタイルの「ワクワクドキドキ感」とライフスタイルの「実現したさ」の二つの視点を中心に審査する。
■作品内容=自身が考える、2030年にありたい心豊かなライフスタイルのアイデアを300―400字の文章にまとめる。アイデアを理解しやすいようにイラスト、図、写真などを貼付する。
■応募方法=電子メール、Fax、郵便などで受け付ける。
■応募締め切り=8月31日必着。
■応募資格=年齢や職業など不問。グループによる応募も可。
■表彰=数点を優秀作として選定予定。受賞者には賞金、賞状などを贈呈。
■審査員=石田秀輝東北大学名誉教授(委員長)ほか。
■発表=10月に日刊工業新聞紙上、ウェブサイトなどで発表。
■問い合わせ=モノづくり日本会議事務局(03・5644・7608)。詳細はホームページ(www.cho-monodzukuri.jp/LS_designcontest)へ。
(2017/6/2 05:00)