(2017/6/15 23:00)
日立システムズは、製造業など現場のデジタル化を支援する「統合資産管理サービス 工場付帯設備管理モデル」を発売した。工場付帯設備管理モデルは2017年4月に発売した「金型管理モデル」に続く業務特化型モデルの第2弾。工場の操業に必要なポンプや空調機など付帯設備の棚卸しや台帳の整備、修理受付窓口の代行などを通じて、棚卸し業務と保全業務の効率化を実現する。同社の統合資産管理サービスは、現場でIT化の下地が不十分なことを踏まえ、その改善や整備などのプレサービス(IT稼働前サービス)に力点が置かれている。顧客からの評判もよく、「デジタライゼーションの第一歩」として位置付け、強化する方針だ。
プレサービスに注力
日本社会に「デジタライゼーション」の波が到来しつつある。デジタライゼーションとは、ビジネスや生活に関わるあらゆるものをデジタル化し、先端技術を駆使して新たなビジネスモデルの創出や経営の効率化、生活の質的向上を図るものだ。特に製造業では設備・資産の稼働率向上や長寿命化、管理コストの削減など、現場のデジタル化のニーズが高い。こうした背景から、日立システムズでは「統合資産管理サービス」を展開している。
統合資産管理サービスそのものは同業他社でも手がけており、特に目新しくはない。斬新なのは顧客企業のIT化以前の課題に着目し、その問題解決をサービスに組み入れたこと。
サービスの全体像を図1に示す。サービスの提供開始当初は、これまで得意のIT技術を駆使し、主に図の右側のアフターサービスやアドバンスドサービスなど、納入稼働をサポートしてきた。しかし、顧客からのヒアリング結果を受け、いま最も力を注いでいるのが現場作業の代行や業務の可視化など図の左側のプレサービスである。
「われわれも、当初は資産管理システムの提供をメインに考えていましたが、ヒアリングを通じて、お客さまの喫緊の課題は、資産の管理が十分にできていないことであり、資産台帳の整備など、IT化の前工程にこそ解決すべき課題があることが分かりました」とサービスライフサイクルマネジメント推進部長の遠藤尚氏(写真右)は話す。
全国約300か所のエンジニアを活用
日立システムズの強みは、50年以上にわたり多様な業務システムの構築、運用・保守を手がけてきたことによるノウハウとデータセンター、運用・監視センター、コンタクトセンター、全国に点在するサービス拠点などの多彩なサービスインフラにある。これにより、棚卸し作業などの前工程から、システムの導入・運用・保守、データ分析、レポーティングまでをトータルに支援できる。
なかでも、業界トップクラスのマンパワーが活用でき、他社にはないサービスが可能であることは大きい。日立システムズはグループ企業の日立システムズフィールドサービスなどを含め全国約300か所に拠点を持ち、保守サポートを行うエンジニアや顧客企業への駐在に慣れているシステムエンジニアを多数抱える。顧客の工場が点在していても、最寄りの拠点の人材が活用できるのだ。
また、長年にわたり、IT機器の保守サービスを提供しており、そこで培った設備部品や予備部品の管理ノウハウを生かした提案も行える。さらに、設備・産業機器に強みを持つ日立グループ各社と連携し、さらなる付加価値サービスも提供可能だ。
「工場付帯設備管理モデル」を発売
その統合資産管理サービスの強化・拡充の一環として、日立システムズでは2017年4月から新たに「業務特化型モデル」を展開している。今回発売した「工場付帯設備管理モデル」は「金型管理モデル」に続く第2弾。金型管理モデルが生産に直接関わる金型の管理に焦点を当てているのに対し、工場付帯設備管理モデルは、ポンプ、変電設備、コンプレッサー、空調機など、生産ラインの周辺を構成する付帯設備の管理効率化に焦点を当てているのが特長。すでにサービスを実施し、棚卸しと保全業務にかかる作業時間を大幅に削減した日用消費財メーカーの事例をもとにサービス内容を定型化したものだ。
生産設備は適切に管理されていても、付帯設備については台帳や保全情報の管理が不十分であったり、管理を特定の現場担当者に任せている企業は少なくない。台帳データが整備されていないと棚卸しに時間がかかるうえ、機器ごとの稼働状況や保全契約の把握、予算管理も困難になる。これに対し日立システムズでは、設備写真の撮影や管理ラベルの貼り付けなど台帳データの整備や棚卸し実務の代行を実施(写真)。また、作業手順のドキュメント化や作業のルール化、さらには設備保全業務の一元管理に向けたベンダー(設備業者)窓口の代行などを通じて、顧客企業の設備保全業務をサポートする(図2)。万一の故障の際にもベンダーとスピーディーに連携し、生産停止期間を極力短くするよう支援する。
最初にITありきではなく、ヒアリングを重ねながら顧客企業の中で見えなかったものを可視化し、人とITのトータルサービスによって最終的にIoT(モノのインターネット)などのアドバンスドサービスを実現するという流れだ。
日立システムズでは今後も業務特化型モデルを順次開発・提供し、統合資産管理サービス全体で2020年までに累計200億円の販売をめざす計画である。
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(2017/6/15 23:00)