[ ICT ]
(2017/7/5 05:00)
ビジネスモデルの変革を進めるNTTドコモ。吉沢和弘社長は第3世代移動通信システム(3G)の終了時期について「2025―30年」との見方を示した。一般的には20年が終了時期の目安となる3Gだが、法人向け機器に入った3Gモジュールの利用中止時期の調整が難しいため、一定の時間を要するとみている。また第5世代移動通信システム(5G)については、ライブ映像を複数の場所に同時配信するサービスの商用化を検討していることを明らかにした。吉沢社長に話を聞いた。
―20年の商用化を目指す5Gの移行により、世代交代が進みます。
「新しい世代の移動通信システムは10年ごとに登場している。使用期間は一つの世代で約20年。3Gは01年に導入されており、本来なら20年ぐらいには終わらせたい。一般ユーザー向けの携帯端末は移行しやすい。難しいのは、自動販売機やガスメーターなど法人向け機器に入ったモジュールだ。機器の取り換え時でなければモジュールを交換できないほか、設置場所もさまざま。顧客との交渉もある。そうなると20年の終了は無理。30年かと言えば、そこまでは長引かないと思う」
―3G終了に伴って一般ユーザーの受け皿が必要になります。
「ドコモユーザーの4割弱は(3Gの)フィーチャーフォンユーザー。このユーザーからの乗り換えが多い『ドコモウィズ』をはじめとした料金プランと一緒に(4GLTEの)スマートフォンへの移行を進めたい。ドコモウィズの対象端末は現在2機種。その後継機だけでなく、対象端末を拡充していく」
―活発化する5Gの実証状況をどう見ていますか。
「5Gのインフラ提供で終わるつもりはない。5Gの基盤を使ってパートナー企業と一緒にサービスを提供する。3Gや4GLTEの開始時は通信の高速化で何ができるか、確信が持てないままインフラを提供した。今回は交通や放送など多様な分野で実証を進めており、3年前の今からサービスの概要が見えるようにしている。ユーザーの5G体験を意識して取り組んでいる」
―今後、具体化したい5Gのサービスは。
「スポーツや芝居などライブ映像の同時配信サービスは、その一つだ。スポーツでも競技場で観戦するだけではなく、複数の会場でリアルタイムに視聴できる。NTTなどの技術を活用し、遠隔地でも、あたかも競技場にいるかのような臨場感のある映像を楽しめるようになる。入場料も競技場だけではなく、複数の会場でもらえるようにする」
―19年度から5Gの投資を始めますが、その見通しは。
「技術の進展もあり、基地局の投資は少なくて済む。新しい周波数に対応する無線機やアンテナに変更する必要があるが、既存の基盤を活用しソフトウエアの切り替えで提供できる。通信速度は4GLTEに比べて50―100倍に向上するが、料金についてはビット単価を50分の1、100分の1に抑えるため、今とほぼ変わらない」
【記者の目/5Gで新産業創出】
5Gは超高速、超低遅延、多数同時接続が特徴。これらの機能を用いれば携帯電話の延長線上ではなく、いろいろな産業を巻き込み、多様なサービスを提供できる。技術に目が向きがちな5Gだが、ドコモはパートナーとの実証を相次ぎ実施し、サービス面を訴求する。5Gで何ができるのか、その用途を見極めつつ、新たな産業の創出につなげようとしている。
(清水耕一郎)
(2017/7/5 05:00)
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