[ ICT ]
(2017/7/19 12:00)
生産中止が発表されてから約2年半、あの「グーグルグラス」が戻ってきた。グーグル親会社の米アルファベットが18日に発表したもので、今度は一般向けのスマートグラスではなく、産業向けに展開する。すでに初期ユーザーとして50社以上が現場に導入し、うちGEやボーイング、フォルクスワーゲン(VW)、DHLなど33社の組織名を公開した。販売はパートナー企業12社を通じて米国および欧州で行う。日本での発売は未定。
今度のスマートグラスは「グーグルグラス・エンタープライズ・エディション(EE)」という名称。アルファベットで先端技術開発を行うX部門の公式ブログによれば、グーグルクラウドのチームやパートナーと協力しながら、クラウドを使ってさまざまな産業のユーザーがスマートグラスを有効活用できるサービスも提供していく計画という。
グーグルグラスEEは「OK、グラス」と声で呼びかけるとシステムが立ち上がるのは以前と同じ。カメラの画素数は500万から800万画素に向上し、プロセッサーも高速化したほか、バッテリーも長寿命になったという。本体部は取り外しができ、互換性のあるフレームを持つ作業用ゴーグルや度入り眼鏡に装着できる。
初期ユーザーのGEアビエーション(オハイオ州)ではメカニックによる航空機エンジンの組み立てや保守に活用。グラスEEのパートナーであるAR(拡張現実)関連ソフトのアップスキル(ワシントン)が開発したソフトウエアを使い、動画やアニメ、写真での作業手順をグラスに映し出す。こうすることで、作業者が手を止めながらパソコンや紙の手順書をいちいち確認する必要がなくなり、作業効率が以前に比べ8-12%改善されたという。
同様に農業機械のAGCO(ミネソタ州)では、生産時間を25%、検査時間を30%それぞれ短縮できた。DHLは独ユビマックス(ブレーメン)のARソフトを利用し、作業者が倉庫の棚から注文品をピッキングするのに、どこに目的の品物があるかをグラスEEが視覚的に知らせてくれる。同社の試算ではサプライチェーン効率が15%改善されたという。
グーグルグラスのプロトタイプ「エクスプローラー・エディション」は2013年4月に米国で1500ドルの価格で限定発売され、ポストスマートフォンの代表格としてもてはやされた。だが、周囲に気付かれずに動画がこっそり撮影できることから、プライバシー侵害につながると懸念の声が高まり、グーグルが15年1月に生産中止を表明。産業向けに絞って商用化を狙うとアナウンスしていた。
【グーグルグラスEEを導入したAGCOの現場映像】
(2017/7/19 12:00)