[ オピニオン ]
(2017/7/28 05:00)
「社員が辞めた日は眠れないこともよくある」。かつてオービック会長の野田順弘さんが、ぽつりと漏らした言葉は実に印象的だった。
そこには会社と社員に対する創業者の思いが溢(あふ)れている。「なぜ辞めたのか」「自分の経営方針に間違っている部分はないのか」と自問自答するという。
システム開発を手がける同社は、先端イメージとは裏腹に、経営方針の一つに「家族主義」を掲げる。創業間もない時期を除き、ここ40年間ほどは新卒採用にこだわる。入社後も年齢や役職に応じた多様な研修を実施。毎年秋には家族を含めて3000人以上が参加する運動会を開き、クリスマスには全社員にケーキを配る。
一体感が強まり、結果として仕事の効率が上がる。2017年3月期決算は23期連続の営業増益を達成。社員同士の距離が近く、同じ目線で仕事に取り組むことで“オン”と“オフ”の切り替え意識も醸成されるという。
国は働き方改革を掲げ、社員の仕事と生活の両立支援に向けた企業の動きも広がっている。ただ単に仕組みを設けるだけでは、業績向上に結びつけるのは難しい。社員の帰属意識を高め、同時に風通しを良くするにはどうするか。家族主義は一つの答えかもしれない。
(2017/7/28 05:00)