[ オピニオン ]
(2017/8/2 05:00)
太陽光発電業界は、発電システム単品を売る事業モデルから「複合ビジネス」に転換し、再生可能エネルギーの普及をけん引してほしい。
関連メーカーや施工業者など135社・団体が参加する太陽光発電協会は、2050年に累計2億キロワットを設置するビジョンをまとめた。現状の5倍の導入量となり、50年時点の全電力需要の18%を太陽光発電で賄う。1億トン以上の温室効果ガスの排出を減らし、2兆円以上の化石燃料の使用を抑制する経済効果も示した。
注目したいのが、50年の国民負担をゼロから数百億円とした点だ。再生エネで作った電気の固定価格買い取り制度(FIT)では、電力会社が再生エネ発電所から電気を買い取る費用の一部を、電気代に上乗せする賦課金で補っている。
15年度に賦課金の総額が1兆円を超え、国民負担が大きいと批判が出ている。ビジョンは30年から数年後に賦課金はピークを迎え、下がり続けると見通す。業界自らがFIT依存からの脱却を進めるためだ。
具体策として、発電した電気を家庭やビル、工場、電気自動車(EV)で使う自家消費への移行を提言する。大規模太陽光発電所(メガソーラー)の電気も地域内で“地産地消”する。電力会社が買い取る電気が減り、賦課金を抑えられる。
実現にはEVなど他の機器とのセット提案、地域の電力需給を調整するエネルギーマネジメント事業への進出など、太陽光発電関連事業者が「複合ビジネスへかじを切る必要がある」と主張する。
現在の市場を見ても、太陽光発電システム単品を売るビジネスの状況は厳しい。国内の太陽光パネルの半分以上は海外製となり、日本メーカーは苦境に立たされている。「勝者なき戦い」といわれるほど価格競争は激化している。
生き残るためには、自家消費や地産地消を支える複合ビジネスへの転換が有効だ。FITに頼らない太陽光発電事業は世界的にも珍しく、海外進出のチャンスも生まれるだろう。
(2017/8/2 05:00)