[ オピニオン ]
(2017/8/1 05:00)
関西地区で電気料金の引き下げを巡る顧客争奪戦がヒートアップしている。全国的にみても高い電気料金の引き下げは歓迎すべきだ。これを機に、中小企業は収益を改善し、経営強化につなげてもらいたい。
関西電力は1日、全顧客の電気料金を平均4・29%引き下げる。関電は東日本大震災以降、すべての原子力発電所を停止したことで代替エネルギー負担が増し、2度にわたり料金を引き上げた。今回は高浜原発(福井県高浜町)3、4号機が再稼働したことに伴い、燃料費削減分などを原資に値下げする。
これに対し、電力自由化で参入した大阪ガスは、現在ある5%の価格差を維持する値下げを打ち出した。他の新電力系会社も相次いで対抗値下げする。
コスト意識の強い関西では、電力完全自由化以降の競争が激しい。2016年4月に本格参入した大ガスの電力契約件数は、7月中旬時点で約39万件を獲得した。関電は大口顧客や中小工場向けなどで、顧客の一定割合を新電力に奪われている。
日刊工業新聞社が関西の中小製造業を対象としたアンケートによると、回答56社のうちの約4割が、関電から新電力に契約を切り替えた。その理由として「コスト削減」が真っ先に上がる。
8月の値下げを受けた行動を問うと、関電ユーザーは「引き続き関電と契約する」が9割と多かった。一方で新電力ユーザーは7割が「新電力と契約を継続する」としつつも、3割は「関電の今後の提案を聞いてみたい」と回答した。電力調達先を柔軟に選ぼうと考えている様子がうかがえる。
関電は高浜に続き、17年度中にも安全基準に適合させた大飯原発(福井県おおい町)を再稼働させ、再度の値下げを検討する。新電力も再び対抗値下げに踏み切ることが予測される。
値下げとはいえ、依然として東日本大震災前の料金より高い水準であることは事実だ。ただ関西の企業の経営マインドは確実に好転するだろう。設備投資など前向きな経営に生かすきっかけにしてもらいたい。
(2017/8/1 05:00)