[ 機械 ]
(2017/8/3 05:00)
【超速バンドソー「HPSAW―310(ハイパーソー)」】
「フォーミュラ1(FI)カーのように、極限の領域の機械だからこそ生じた課題が数多くあった」―。アマダマシンツール(神奈川県伊勢原市)の辻本晋小野工場工場長は、開発当時をそう振り返る。新型バンドソー「HPSAW(ハイパーソー)」は、ハイパー(超越)の製品名の通り、これまでの常識を超えている。
例えば約10倍という高速切断がそう。バンドソーとは、鋼材を帯状の刃で切断する機械をいう。ベアリングに使われる素材の1回の切断時間は28秒。これは現在も販売中の数世代前のベストセラー機で5―7分、直近の業界最高速クラス製品でも1分36秒かかることから、他を圧倒する。
コスト削減効果も大きい。HPSAWの専用刃「AXCELA HP1」は薄く、円盤状の刃を回転させて切断する丸のこ盤に比べ、材料歩留まりがいい。HPSAWでは1時間に生じる切りくずの量が39キログラム、帯のこ盤では103キログラムという。本体設計を担当した瀬戸章男部長は「1キログラムの材料代から計算すればコストの違いは明らかだ」と胸を張る。
これらの性能は、機械本体と刃の二つがそろってのこと。リング状の刃を周回させて切断するのだが、本体構造を抜本的に見直した。
従来の常識は切断時に刃をひねり、刃先をワーク(加工対象物)のある下側に向けていたが、ひねらずに下を向かせる構造に改めた。「ひねりゼロ」は刃への負荷を減らし、8倍の長寿命化や高速切断の重要要素になった。
一方、業界最速という高速回転に耐えられる刃の開発は、対外発表の直前まで難航した。従来レベルであれば刃の材料変更で対処できたが、これを超えた。刃先の付け根の凹部が問題箇所であると想定した開発陣は、顕微鏡で見ながらやすりがけし、試作品を完成させた。長さ7メートル超、1000カ所以上を1週間かけて磨いた刃で、課題を突き止めた。
そこから開発した自動機で刃の量産が可能になり、製品化にこぎ着けた。
(六笠友和)
(2017/8/3 05:00)