[ 環境・エネルギー ]

低コスト・新技術不要の「風力熱発電」、IAEが実証研究検討

(2017/8/10 05:00)

  • 風車の回転エネルギーを利用する(イメージ)

風力を利用して熱をため、後で電気に変換する「風力熱発電」の実証試験が日本でも始まりそうだ。エネルギー総合工学研究所(IAE)が複数の大手企業と実証研究を検討しており、2017年度内にも試験プラントの建設を決める可能性が高まっている。電気を蓄電池にためる場合に比べて、20分の1以下と安く、真新しい技術や材料も不要のため、新興国への輸出技術に化ける可能性も秘める。

風力熱発電は風車内部に大型の磁石を用いた発熱器を搭載し、風車の回転エネルギーを利用する。発生した熱で「溶融塩」という媒体を循環させ、熱を地下タンクに蓄える。電力が必要なときに、熱で蒸気をつくり、蒸気タービンを回してエネルギーを取り出す。

研究を主導するIAEの岡崎徹研究員は「熱機械は電池に比べて発電効率が低いとの指摘が多い。だが、蓄熱コストは電池の20分の1であり、設備コストなどトータルで考えれば、圧倒的に安い」と語る。

コスト安からもわかるように、特徴的なのは蒸気タービンなど使う技術が成熟している点だ。岡崎氏は「完成されている技術ばかりなので場所を問わない。新興国で風力が拡大すれば必ず必要になる技術」と強調する。

実際、蓄熱はこれまで、「古い技術」と再生エネルギーの議論では見向きもされなかったが、新興国での再生エネルギーの利用が普及し始める中、変化の萌芽(ほうが)も見える。

2016年には独シーメンスが電力会社などと実証プラントの建設をすでに表明。完成すれば、世界初の「風力熱発電」の試験設備になる見込みだ。

岡崎氏も「シーメンスの発表以降、風向きが変わった」と語るが、同時にそれは世界の市場での技術競争で、すでに日本が遅れをとっていることを物語る。岡崎氏は年明けにも、実証設備の建設の概要をまとめたい意向を示している。

(2017/8/10 05:00)

建設・エネルギー・生活1のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

↓もっと見る

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン