[ オピニオン ]
(2017/8/10 05:00)
これまで複数あった化学物質情報の伝達方式が、経済産業省が主導する「ケムシェルパ」に集約される見通しだ。今後は“日本方式”として、アジア諸国への普及を期待したい。
すでにキヤノン、パナソニック、ソニー、NEC、OKIがケムシェルパを採用し、既存方式からの移行を進めている。電機業界が先行したが、7月には富士フイルムが化学メーカーでは初めて加わった。
化学物質情報の伝達は、欧州の規制への対応策として必要となった。完成品メーカーが自社製品に、規制された化学物質を使っているかどうかを独力で把握するのは事実上、不可能だ。部品などのメーカーから情報を提供してもらうために、対象物質などを定めた伝達方式が生まれた。
ただ日本では不幸なことに、大企業の考え方の違いで複数の方式が併存していた。部品メーカーは同じ部品でも、納入先の方式に合わせて調査方法を変えたり、調査票を書き分けたりしなければならない。特に中小部品メーカーにとっては、煩雑な回答業務が大きな負担になっているという。
経産省は中小の負担を軽くしようと、標準方式となるケムシェルパの開発を主導した。方式が統一されれば、対象の物質や量、調査票が同じなので情報を円滑に伝えられる。一部に反発もあったが、国内の方式は一本化に向けて進んでいる。
今後、重要なのは海外への普及だろう。取引先の国ごとに伝達方式が異なる現状では、国境をまたいで部品や半製品を移動するたびに情報伝達の負担が増すことになるからだ。
今のところアジア諸国には、確立された伝達方式はない。経産省は海外企業がケムシェルパの使い方を学べる電子教材を用意したり、入門セミナーを開催したりして、ケムシェルパの海外展開を支援している。
ただ海外企業との取引の細部に、日本政府が関与するには限界がある。ケムシェルパを採用した大手各社は、海外の調達元にも同方式を普及すべく取り組んでもらいたい。
(2017/8/10 05:00)