[ オピニオン ]
(2017/8/14 05:00)
デフレ収束は見えないが、物価の下落が弱まったことは事実だ。これまで値引きを売り物にしてきた小売業は、次のステップとして積極的に新しいモノづくりに挑戦してほしい。
ドンキホーテホールディングスの自社ブランドの50型4Kテレビが話題を集めた。フルハイビジョンの4倍の高画質である4Kテレビは、一般に10万円以上する。メーカー、小売業にとって付加価値の高い商材だ。ドンキはそれを5万円台という破格値で売り出した。
結果は初回3000台は1週間で、追加の1400台も即座に完売した。東京五輪・パラリンピックを控えて、4Kテレビがほしい消費者は少なくない。しかし“高根の花”であり、躊躇(ちゅうちょ)していた。そうした潜在的な購買意欲にドンキが火をつけた格好だ。
これは、かつてダイエーがカラーテレビ販売で小売業の存在意義を見せつけたことを思い起こさせる。安売りを大手メーカーからとがめられ、満足に商品を調達できなかったダイエーは、対抗して格安のプライベートブランド(PB)商品を開発・発売した。
ドンキはかねて薄型テレビをPBとして開発してきた経緯がある。4Kテレビはこの延長線上だ。海外メーカーへの委託生産を活用すれば、先端商品も安価にできることを証明した。
こうした格安4Kテレビは本来、大手家電量販店が開発すべき商品ではないだろうか。家電量販がメーカーとの関係に配慮して消費者ニーズに向き合わなかったのだとしたら、小売業として自分たちの首を絞めかねない企業行動だ。
最近、しまむらの「裏地あったかパンツ」や、ニトリの「接触冷感」製品など、機能性商品がヒットしている。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、もともとの成長の原動力は起毛仕上げの「フリース」や機能性肌着の「ヒートテック」などの開発だった。
常に消費者と接する小売業は消費者ニーズを敏感にとらえ、商品にする努力を忘れないでもらいたい。
(2017/8/14 05:00)