[ オピニオン ]
(2017/8/16 05:00)
地方経済の活性化策として、地域限定での利用を想定する電子地域通貨への関心が高まっている。情報通信技術(ICT)の進歩で低コストで導入・運用できるようになった。継続して利用できる仕掛けづくりに知恵を絞りたい。
これまでも地域通貨は何度かブームが起こったものの、いつの間にか終息してしまった。なぜうまくいかなかったのか。コストや運用面の問題、利用者へのPR不足などが指摘されている。
各地で行われている実証実験の中で、岐阜県・飛騨高山地域を地盤とする飛騨信用組合が導入を目指している電子地域通貨「さるぼぼコイン」がある。まず飛騨信組の職員約200人を対象に試験導入。飲食店を中心とした地元41店舗で支払いに使える。実証実験で課題を抽出した上で、早ければ今秋の実用化を目指している。
地域通貨の普及には、参加事業者をいかに増やすかがカギだ。その点、飛騨信金は地域密着で築いた取引先ネットワークが強みで、今後は取引先の地元企業、商店などの参加が増えていくだろう。
地域通貨の電子化で採用したブロックチェーン(分散型台帳)技術も生かしたい。購入履歴などの情報をビッグデータ(大量データ)化して活用すれば、買い物客にキャンペーン案内など販促情報を提供できる。参加事業者に対してはマーケティング提案など金融機関らしい事業支援も可能だ。
近年、急速に増えている訪日外国人旅行者の取り込みにも有効だろう。高山市は2016年の外国人宿泊数が過去最高の46万人を記録し、人気スポットとなっている。クレジットカード対応の店舗がまだ少ないこともあり、母国の通貨をさるぼぼコインに替えれば、買い物しやすくなるはずだ。
地域通貨は本来、地域資源と親和性が高いという指摘がある。電子地域通貨の導入は、高度情報化社会における新しい地域活性化策の仕掛けづくりともいえよう。地域の奮闘を見守りたい。
(2017/8/16 05:00)