[ オピニオン ]
(2017/8/18 16:00)
今年3月にサンフランシスコで開催された「第1回スタートアップワールドカップ(SWC)」に日本代表として出場し、見事優勝を果たしたユニファ(名古屋区中区)。
以前、この欄でもお伝えしましたが、ロボットやIoT(モノのインターネット)を活用した園児の見守りサービスが高く評価され、優勝賞金として100万ドル(約1億1000万円)の投資資金を獲得しました。では、同社はその後どうなったのか。世界大会優勝の波及効果は、ことのほか大きかったようです。
「50社以上の世界の投資家や、保育園、IoT(モノのインターネット)関連の関係者などから連絡が相次いだほか、ブランド向上や人の採用に至るまで、本当に短い期間でさまざまなものを手に入れることができた。頑張っても5年くらいかかると思われたことが、わずか1年で実現できている」
こう話すのはユニファの土岐泰之社長。8月8日のSWC2018日本地域予選の記者会見で、静かな口調ながらも、SWCによるビジネス面での効果に驚きを隠しませんでした。
特に採用面でのインパクトは絶大のようで、土岐社長によれば4-7月での応募件数は例年の5倍以上と、優秀な人材を採用するのに大いに貢献している様子。社員の意識にも変化が見られ、事業のグローバル展開に向けて「世界一のモノを作るんだ」という意気込みが明確になってきたといいます。
一方で、同社は今回の100万ドルの投資資金を起点に、スマート保育園構想のグローバル展開に向けて着々と手を打ちつつあります。追加資金調達や、スマート保育園向けの機材について大手リース会社との1億円規模のリース契約、海外を含めたパートナーとの業務・資本提携の交渉、さらにはシンガポール、フランス、米国を対象とした市場可能性調査にも乗り出すとのこと。「今年から来年にかけて(構想の)実行フェーズに入る」と同社長は言葉に力を込めます。
さて、世界では星の数ほどビジネスコンテストが開催されていますが、実際には賞金を獲得することよりも、それをきっかけに知名度を上げたり、投資家などに技術やサービスの優秀さを知ってもらうことの意義が大きい。投資家にとってはもちろん、ダイヤの原石を発掘するうまみがあります。
実際、SWCを主催する米フェノックス・ベンチャーキャピタルのアニス・ウッザマンCEOによれば、ユニファばかりでなく「サンフランシスコでの決勝に登壇した15社すべてが、その後結構な額の資金調達を果たした」ということです。
そもそも同社がSWCを始めたのは、「アフリカなども含めて世界中のスタートアップを一緒につなげ、育成する環境を作る」(ウッザマンCEO)という思いから。少子高齢化で経済のグローバル化が至上命題となる中で、日本のスタートアップもこうした枠組みに挑戦しない手はないでしょう。
では、スタートアップが世界展開を進める上で、大切なのは何でしょう。「一番大事なのは経営者のウィル(意志)。日本市場が伸びないからではなく、自分たちは海外に出たいんだという気持ちをまず持ってほしい」。日本予選の審査員長を務めるインフォテリアの平野洋一郎社長兼CEOは自身の起業経験に照らしながら、こう強調します。
さらに、こうしたコンテストや海外での商談に必要とされる英語についても一家言。「英語より中身が大事という話もあるが、伝わらなくては意味がない」と、しっかり自分のモノにするようアドバイスしてくれました。
2018年5月11日にサンフランシスコで開催される次回のSWCは、前回の倍の世界30カ所の予選を勝ち抜いた30社で優勝投資賞金100万ドルが競われます。その日本予選は東京国際フォーラムで10月18日に実施予定(応募締め切りは9月17日)。ちなみに日本予選では、ファイナリスト10チームのうちの1社に対して、CACホールディングスから5000万円の投資賞金が贈られる特別賞も用意しているそうです。
「グローバルでイノベーションを起こすには、プラスになることは何でもやるべきだ。SWCは時間やリソースを買うには大きな存在。ぜひチャレンジしてほしい」。こう話す土岐社長ほど、コンテストの効果を実感した経営者はいないでしょう。日本のスタートアップを、世界の檜舞台が待っています。
(デジタル編集部・藤元正)
(2017/8/18 16:00)