[ 機械 ]
(2017/8/30 05:00)
【三菱大形高精度加工機 MVR30Fx】
「金型業界に評価される機種開発が積年の念願だった」と、大形高精度加工機「MVR30Fx」の開発を指揮した佐郷昭博三菱重工工作機械取締役バリューチェーン本部長は語る。“他社に追いつけ”ではなく“一歩先へ”と力を注いだのが金型の磨きレス追求だ。
金型表面のごくわずかな凹凸は後工程に影響するが、凹凸はマイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位で手仕上げに頼らざるを得ない。理論上はデータ化して機械仕上げできるものの、データ通り稼働しているかどうかの確認も難しい。ソフト面の対応にも限界があり、全く別の機種として開発に一から取り組んだ。
要素技術のベースは約10年前に発売した小型精密加工機「μV1」。その後、ユーザーの要望に沿った改善を続け、それを大型機にも適用した。サーモスタビライザーコラム採用や主軸内部冷却、撮像式工具測定システム搭載などで高精度加工、磨きレスを実現し、生産性向上につなげた。
設計に携わった中村真吾技術開発推進室主任は「大型機だからと妥協しかけたが、ハイレベルな機種を生み出したい」と、開発陣でアイデアを出し合って完成にこぎ着けた。
安全面を考慮し、従来の大型機種にはなかった機械全体を覆うフルカバーの標準装備にも“一歩先へ”の思いがこもる。国産小型旅客機「MRJ」のデザインも担当した三菱重工業先進デザインセンターに協力を依頼。機械の設計と並行してデザインも検討し、威圧感のないスマートな印象に仕上がった。「機能、安全性、作業性、見た目。すべてを満足させることができた」(佐郷取締役)と自負する。
イメージの一新は「営業面でもユーザーの共感を得ている」と平元正規営業戦略業務部トータルソリューショングループ長は手応えを感じる。機能に色やデザインまでを商品要素に取り込み、大型金型加工を中心に一般機械加工などへの展開も視野に入る。
(京都総局長・谷正美)
(2017/8/30 05:00)