(2017/9/15 00:00)
萩原工業が「これしかない」と確信したftServerとは?
花火大会の河川敷に敷かれるレジャーシートや土砂災害を防ぐ土のうなどに使われる合成樹脂繊維。その有力メーカーである萩原工業(岡山県倉敷市)は高い技術力が顧客に評価され業績を伸ばしている。しかし同社のもう一つの強みは、顧客ニーズに迅速かつきめ細かく対応する社内情報共有システムにある。ところがシステム構築から時間が経ち、その刷新が喫緊の課題となっていた。IoT時代を見据え最適なシステムは何か。ここで選択を間違うと致命傷になりかねない。新システムの導入でどのような点を重視し、決断に至ったのか。製造業のデジタル投資の参考になるだろう。
基幹システムで蓄積しているデータから現場で必要なデータを抽出・表示する『HAGI-Webシステム』。 仕入れ、受注、在庫、生産管理、販売実績、稼動率、利益率といった各現場が必要とする情報を見える化するためのBI(BusinessIntelligence)の仕組みだ。
このシステムにより現場担当者は、業務に必要な情報を簡単に入手できる。これまでビジネススピードと業務効率の向上に大きく貢献してきた。
事業支援部門経理部情報システム課の伊東研吾氏は「基幹システムで蓄積している情報は資産そのもの。 しかし、当社の基幹システムでは情報を直接参照できない。そこで、定期的に基幹システムからデータを取り出して保存するデータベースを構築し、HAGI-Webシステムから参照している」という。
しかし構築から7年が経過しトラブルが相次ぐようになる。 まず、バックアップ装置が故障したが、保守部品が入手できず修理することができない。さらにサーバのパフォーマンスが足りず、データを表示するまでに数十秒待たなければならないのが当たり前で、タイムアウトするケースも頻発。その結果、業務効率が低下していた。
「しかも、他システムについても老朽化対策や、HAGI-Webシステムと連携する他の業務システムからのデータの増大などで、全体のリソース不足に陥るのは目に見えていた。そこで、将来を見越した統合情報システム基盤を導入する必要があると考えた」と伊東氏は振り返る。
ハードウエアの信頼性と運用性が決め手に
社内で検討を重ねた結果、新情報システムには仮想化基盤を採用し、既存システムを順次移行することとした。
「移行に際して重視した点は3点。まずは信頼性。当社の工場は24時間365日稼動している。複数の業務システムを仮想化統合する基盤となるハードウエアには、これまで以上の信頼性が求められる。2点目はデータベースの移行支援。HAGI-Webシステムは自社開発していたが、構築当時の仕様書や運用マニュアルが不十分で、ナレッジが継承されていなかったため、移行には大きな不安を抱えていた。3点目は導入費用。関連する費用が予算内に全て収まること」(伊東氏)。この3点を満たす提案を複数社に依頼したところ、富士ゼロックス岡山からとても目を引く提案があった。
多くの提案は、クラスタシステムを用いたものだった。しかしクラスタシステムは、障害発生時に本番系サーバから待機系にフェールオーバー(切り替え)が発生するため、システムのダウンタイムが生じ、その間の業務停止を避けることができない。
一方、富士ゼロックス岡山の提案は、ストラタステクノロジーの無停止型サーバ「ftServer」を用いた高信頼性システムだった。ftServerは、CPUやメモリ、電源などすべてのコンポーネントが二重化されており、単一障害点が排除されている。
各CPUが同じタイミングで処理を実行し常に同期をとっているため、万が一、障害が発生すると自動的に検出され、即座に障害箇所がシステムから切り離され、OSやアプリケーションに影響を与えることなくシステムは稼動し続ける。
障害が発生したコンポーネントはシステムを止めることなく交換が可能で、タイムラグやデータのロストを回避する。
富士ゼロックス岡山ソリューション営業部SEグループ グループ長の角南和宏氏は「クラスタシステムと比べ、ftServerは構成がとてもシンプル。障害発生時でもシステムは止まることなく業務を継続できるが、運用はシングルサーバと変わらないため、システム運用管理者様の工数を削減することができる。可用性が高く、運用保守の手間がかからないftServerは、新しい情報システム基盤に最適なサーバだと考えた」と話す。
富士ゼロックス岡山は、提案から構築、導入後のサポートまで一貫したマルチベンダ対応が強みだ。また「働き方変革を推奨しており、高信頼で手離れの良いftServerは今後のIoTへの取り組みを支える情報システム基盤になると、自信を持って提案した」と、同社メジャー営業部メジャー2グループアシスタントマネージャーの山添祐二氏も続ける。
萩原工業側にとってもftServerの稼動率の高さ、障害時の対応、今後の運用管理、保守体制、全ての面で安心できる提案だった。合成樹脂事業部活性部活性課物づくり活性チームの瀬良保氏は「データベースの移行作業支援も含めて予算内に収まる。これしかない、と確信した」という。
デジタルビジネスへの期待が高まる中、IoTから生み出されるデータは貴重な資産だ。ftServerが支える高信頼性情報システム基盤は、萩原工業のビジネスを強力に推進する武器となるだろう。将来的には、製造工程全体でIoTを活用することも視野に入れている。大量の情報を利活用することで、生産性の向上や業務効率の改善だけでなく、製造工程の無人化や新しいサービスモデル構築も想定している。
そのためには、機械が安定して動いていること、生産を支える情報システム基盤も安定稼動していることが必須条件。瀬良氏は「経営層からはタイムリーなデータ分析などリアルタイムな情報連携が求められる。今回のftServer導入は、当社のIoTへの取り組みの大事な一歩になった」と語る。
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(2017/9/15 00:00)