[ その他 ]
(2017/9/1 05:00)
ナイロビ発
2017年08月31日
政府は、商用・家庭用を問わずビニール袋の使用・製造・輸入を禁止する通達を出し、8月28日に発効した。環境汚染を防ぐのが目的で、違反者には罰金か懲役、もしくはその両方が科される。製造業団体は雇用が失われるなどとして環境・土地裁判所に規制の差し止めを求めて提訴したものの、却下された。
違反者には罰金や懲役刑
環境・水・天然資源省のワクフング長官は2017年2月28日付で、環境管理調整法にのっとり、ビニール袋の使用・製造・輸入禁止に関する通達を出していた。同通達によると、商用・家庭用を問わず、ビニール製の買い物袋および平袋(Flat Bags)の使用・製造・輸入が禁止され、その効力が6カ月後の8月28日から発生するというものだ。同規定は旅行者にも適用され、ビニール袋を製造・輸出しているメーカーも対象となる。違反者には200万~400万ケニア・シリング(約220万~440万円、Ksh、1Ksh=約1.1円)の罰金か1~4年の懲役もしくはその両方が科される。同省は環境警察を組織し、郡政府などと協力しながら同通達を執行していくとしている。
ケニア政府は、ビニール袋の投棄や焼却による生態系や生物多様性の破壊、土壌や大気汚染の発生を防ぐことを規制の目的としている。ケニア国家環境管理局(Nema)によると、ケニアではスーパーマーケットだけで年間1億枚のビニール袋が配布されているという。Nemaは小売業に対して保有しているビニール袋の枚数とその処分計画の提出を命じている。
平袋は適用除外となる場合も
Nemaが発表した同通達のガイドラインによると、買い物袋は色や厚さに関係なく全面的に禁止されるものの、平袋については3つのカテゴリーで例外を設けている。第1は、製品の1次包装に使用されるビニールの製品情報などが明瞭に印字されている場合で、Nemaの許可があれば使用が許される。第2に、医療や化学品などの有害廃棄物を焼却するために梱包(こんぽう)される平袋や、許可を受けたごみ収集業者がごみを持ち運ぶために利用し、再使用もしくはリサイクルされるごみ袋は適用除外となる。第3に、空港の免税店で使用される平袋はケニア国外扱いとなるため適用外となる。ただし、同ガイドラインは通達の詳細を網羅的に説明しているわけではなく、機内に液体などを持ち込むためのビニール袋などがどう扱われるのかは不明であり、通達の内容・運用の具体化が待たれる。
裁判所は業界団体の訴えを却下
国連環境計画(UNEP)は、同通達を出したケニア政府の決定を「他国を啓発し、環境運動によりコミットさせることを後押しする称賛されるべき環境リーダーシップ」と歓迎している。一方で、ケニア製造業協会(KAM)によると、国内にはビニール袋のメーカーが約30社あり、同通達の適用により直接・間接的に9,000人の雇用が失われるとして反発している。KAMは同通達の差し止めを求めて環境・土地裁判所に提訴したものの、同裁判所は、ビニール製造業者などの利益と、ケニア国民の環境権や環境保護管理に関する憲法や法的枠組みとの整合性を勘案し、後者の利益を優先するべきとして訴えを退けた。
新たな素材の袋を開発する動きも
Nemaは禁止したビニール袋の代わりに、サイザルやジュートなどの麻およびパピルスなどで作った袋、ポリプロピレンやポリオレフィン製の袋、でんぷんやキャッサバなどを素材にした100%生分解性の袋などを挙げている。サイグリーンアフリが野菜の廃棄物を素材に開発した袋は、機能と見た目はビニール袋と同じで、熱湯で溶け、180日以内に分解されることから環境に優しいという。また、バイオマスを原料とする生分解性プラスチック袋や古着を利用した袋を開発する企業なども出てきている。
(島川博行)
(ケニア)
(2017/9/1 05:00)