[ オピニオン ]
(2017/9/5 05:00)
核兵器による威嚇は決して容認できない。日本としては硬軟両面から、断固として危機に対処していく必要がある。
防衛省は2018年度予算に、在日米軍関係費と政府専用機を除いた防衛関係費5兆219億円を要求した。前年度当初予算比2・5%増の高い伸びで、過去最高額となる。
査定はこれからだが、防衛省はさらに弾道ミサイル攻撃に備えた防衛システムを年内に選定し、予算に上積みする計画。イージス艦のシステムを陸上に転用するイージスアショアが有力という。
防衛費の増額が認められれば6年連続だ。直近の北朝鮮情勢だけが理由ではないが、厳しい財政事情の中での増額に理解を示す国民は増えていよう。とはいえ、硬質な正面装備の強化にだけ頼るわけにはいかない。
近年の北朝鮮による核実験と弾道ミサイル開発は、東アジア地域の安全保障を揺るがすだけでなく、北米大陸を含めた世界全域の平和と安全を脅かすレベルに達した。今後の米国の対応は予想しがたいが、武力解決の選択肢も排除できない。東西冷戦期に匹敵する危機である。
産業界は東アジアの戦火を決して望んでいない。日本の国土に直接の被害が及ばないとしても、騒乱は通商を萎縮させ、経済活動を妨げる。結果的に国民生活は多大なダメージを受けるだろう。ましてミサイルの直接攻撃を受けるような事態となれば、すべての国民の生命・財産を守ることは難しい。
日本が防衛費を増やし、守りを固めることは重要だが、野放図な軍拡につながるようでは困る。日米協調による軍事的圧力、周辺国による経済・通商制裁など硬軟両面の手法を総動員して、北朝鮮の暴発を抑え込まなければならない。
軍備は、他者から見た意図が不透明であるほど危機を生む。周辺国・関係国が統一したメッセージを北朝鮮に送り、軍事的冒険を断念させなければならない。日本もまた、防衛力拡大の理由を諸外国に説明する必要がある。東アジアの平和は、そうした努力の上に成り立つ。
(2017/9/5 05:00)