[ 政治・経済 ]
(2017/9/25 05:00)
安倍晋三首相は25日にも会見し、政府が掲げる財政健全化目標の達成時期を先送りする方針を表明する考えだ。2019年10月の消費増税による税収の使途を変更し、国債償還に充てる財源の一部を幼児教育・保育の無償化などに配分することが背景にある。国債償還のペースが鈍り、20年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の達成を断念せざるを得ない状況。経済安定化に資する財政健全化の遅れは必至で、経済界に懸念の声が広がりそうだ。(編集委員・神崎明子)
【衆院選の争点】
安倍首相は28日召集の臨時国会冒頭で衆院を解散し、10月10日公示、同22日投開票の日程で総選挙を実施する意向だ。衆院選の争点の一つとして「人づくり革命」を掲げる。幼児教育・保育の無償化を女性活躍や少子化対策につなげるほか、低所得世帯を対象とした高等教育の負担軽減により、高度人材の育成を加速することを狙う。
問題は財源だ。19年10月の消費増税で増える税収約5兆円のうち、国債償還に充てるはずの財源の一部をこれら教育分野にも配分すれば財政健全化への足取りは鈍くなる。内閣府の試算によると、実質2%以上の高成長が継続しても20年度に8兆2000億円のPB赤字が残る見通しで、この赤字幅がさらに拡大することになる。
【軽減税率の廃止】
日本商工会議所の三村明夫会頭は20日の会見で、政権が消費増税を予定通り実施する意思を示したことを評価しつつ、幼児教育・保育無償化などの財源は消費税率10%時に導入される軽減税率の廃止で賄えるとの見解を示す。軽減税率は中小企業に煩雑な事務処理を強いることにも配慮したとみられる。
経済同友会の小林喜光代表幹事も財政健全化を重要視する。12日の会見で「(危機的な日本の財政を)補完するためには(将来的に)消費税を15―20%に上げていかなければならない」との認識を示しており、健全化は待ったなしの状況だ。
経団連の榊原定征会長も安倍改造内閣が発足した8月に「深刻な日本の財政状況を直視」するよう求め、「社会保障制度改革や財政健全化など痛みを伴う改革にも真正面から取り組むべきである」とのコメントを発表。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)会長としても「20年度のPB黒字化は絶対に実現しなければならない」と語っていた。ただ「簡単なターゲット(目標)ではない」とも付け加えていた。
【将来不安払拭】
社会保障制度の持続可能性を目指した財政健全化は国民の将来不安を払拭(ふっしょく)し、回復力が鈍い消費の喚起と経済の安定化を期待できる。政権の看板政策「人づくり革命」の財源は歳出改革や所得税改革などを通じて捻出し、経済再生と財政再建を両立させる形で進めることが求められる。
(2017/9/25 05:00)
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