[ 政治・経済 ]
(2017/10/6 05:00)
「内部留保課税」問題が再燃しつつある。新党「希望の党」は、2019年10月に予定する消費増税凍結後の財源として、同課税の大企業への導入を検討する意向。だが同課税は企業に賃上げや設備投資を促す効果などが指摘されるものの、法人課税後の剰余金への課税は二重課税になる。消費増税凍結により軽減する家計の負担を企業に強いる形になる。
純利益から配当金を差し引いた剰余金の残高である内部留保(利益剰余金)は増加傾向にある。第2次安倍晋三内閣が発足した12年度は304兆円だったのに対し、16年度は過去最大の406兆円に達した。
また財務省の法人企業統計によると、全規模・全産業の16年度の経常利益は12年度比54・7%増と大幅に増加して過去最大になった一方、人件費は同2・5%増、設備投資は同23・9%増にとどまった。12年度に37%だった法人実効税率を16年度に29・97%に引き下げたこともあり、利益が賃上げや投資に還元されていない状況を懸念する声も政府・与党内から聞かれる。
麻生太郎財務相は9月末の会見で、内部留保に課税して企業に賃上げや投資を促す考え方について「検討に値する話だと思う」と指摘。希望の党が消費増税凍結後の財源と位置づける発想とは異なるが、経済好循環を実現する手法として政府・与党内には以前から“内部留保課税論”がくすぶっている。
内部留保をこれ以上増やさないためには、賃上げや設備投資(減価償却費)を増やすか、配当性向を引き上げる必要がある。ただ、そもそも利益の使途のあり方は企業が決めるもので、二重課税の問題も浮上する。経営者マインドや株価に影響する懸念もある。
日本総合研究所の山田久理事は「二重課税問題もあり、税理論的に導入は難しいのではないか。政府が実施した投資減税などをさらに効果的に実施するほか、企業が中期的に抱く不安を取り除く施策が期待される」とした上で「成長戦略のさらなる強化、人口減対策としての外国人労働者の受け入れ拡大、さらに財政再建に向けた道筋をつける必要がある」と指摘する。
(2017/10/6 05:00)
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