[ オピニオン ]
(2017/10/20 05:00)
大阪府の新規開業数は全国2位だが、新規上場企業数は東京都の10分の1程度にとどまる。まずは官民が連携して情報を共有化し、ベンチャー企業の実態把握に当たってもらいたい。
厚生労働省の雇用保険統計年報によると、2016年度の大阪府の開業数は2位の1万1700社。東京都の2万557社に比べると半分以下だが、7000―8000社の低迷期を脱し、回復基調にある。
回復理由には、14年1月施行の「産業競争力強化法」による市町村による創業支援がある。開業率は沖縄の8・1%を筆頭に、埼玉、千葉、神奈川、福岡の各県に次ぐ6位(6・7%)だ。東京都が10位(6%)で全国平均が5・6%なのに比べれば、健闘している。
一方、日本取引所グループによると、16年の新規上場企業数は全国で86社。このうち東京都は55社なのに対し、大阪府はわずか6社しかない。経済規模以上に大きな開きがある。
要因について大阪府や関西経済同友会は、企業の成長を加速するアクセラレーターや投資家の不足を挙げ、起業家が成長の機会を求めて東京へ流出していると強調する。ベンチャーが大阪に集まりにくく、育ちにくくなっていると指摘している。
指摘はもっともだが、他にも要因が考えられる。ベンチャーを生み、育てる基盤はある。例えば大阪府立大学で起業家精神を醸成し、開業段階では大阪府の起業家スタートアップ事業、成長期では大阪市のOIHシードアクセラレーションプログラムなど多くの支援事業がある。
ただ、個別には機能している一方で、情報が共有化できておらず、うまく連動していないように思える。
まずは各事業の担当者が情報を共有化し、ベンチャーのフェーズ、数、ニーズを把握すべきだ。実態を正確に把握することで、効果的な支援策が打てるはずだ。
足りない部分を補う対症療法ではなく、総合的にベンチャー企業を一貫支援する“骨太”なエコシステム(生態系)が、大阪には求められている。
(2017/10/20 05:00)