[ 科学技術・大学 ]

【電子版】アルツハイマー病の治療・診断法開発へ、仏研究グループが動物モデル

(2017/10/27 20:00)

  • 出典:アジャンティー(AgenT)のHP

フランスの国立保健医学研究機構(Inserm)やパリ南大学などで構成される研究グループは、マウスを使ってアルツハイマー病の進行を再現した“動物モデル”を開発した。研究結果は大脳関連の学術論文誌「セレブラル・コーテックス(Cerebral Cortex)」に18日掲載された。今後、この技術の実用化研究を行うスタートアップ「アジャンティー(AgenT)」をパリ近郊に立ち上げ、治療法と早期診断手法の開発を目指す。

研究加速に向けてスタートアップ設立

アジャンティーの日本マネージャーで医学博士の多田智氏は「これまで治療不可能と言われてきたアルツハイマー病に対し、それが発症する前段階で病気を診断し、適切な治療を施す道が開かれる」としている。

アジャンティーは、この動物モデルの発明者で論文の最終著者であるジェローム・ブロドー神経科学博士とHEC経営大学院(HEC Paris)卒のバプティスト・ビヨワール氏が創設した。

現在に比べて10年早くアルツハイマー病を診断し、治療が難しくなる前の段階で、治療を始められるようにすることが狙いだ。研究機関、医薬品業界のために前臨床試験を行う。さらにヒトアルツハイマー病の早期血液診断について研究する。

具体的には、アルツハイマー病患者の脳内で確認される特有の2種類の異常に対して医薬品を試験し、効能と効果を明らかにする。さらに、まだ病気を治療できる早期の段階の状況に関して研究する。また、最も早期の段階で、発症のマーカーになる血液中の物質を見つけ、病気を治療することができるとされる45歳以降の人たちの発症前診断を可能にする。

2種類の異常を一つの動物モデルで

動物モデルを開発したグループは、Inserm、パリ南大学のほか、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)、パリ・デカルト大、仏国立科学研究センター(CNRS)の研究者ら。アルツハイマー病が進行すると現れる「神経細胞中のタウたんぱく質の凝集」および「神経細胞外のアミロイドβ42ペプチド斑の出現」という2種類の異常について、一つの動物モデルの中で表現できるようにした。

これまでの動物モデルでは、2種類の異常のうち、いずれか一つしか出現できなかった。動物モデルは、生物・医学上の特性が分かっている動物のうち、ヒトの病理や症状の特徴について、すべて、もしくは部分的に示すことができる動物をさす。

アルツハイマー病は現時点で、治療不可能な病気とされている。

日本では、65歳以上になる3500万人のうち460万人が認知症で、さらにこのうちの6、7割がアルツハイマー病の患者とされる。現在、利用できる治療方針は効果が不十分と考えられており、治療のための臨床試験も上手くいっていない。その主な理由として「治療薬の投与を始める時期が遅すぎる」「現状の動物モデルがアルツハイマー病を正確に再現できていない」との見方がある。

(2017/10/27 20:00)

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