[ ICT ]
(2017/11/3 05:00)
企業における働き方改革を推進するツールとして「働き方見える化サービス」が注目されている。ただ、このツールを適用する際には、働き方改革の目的を見失わないようにすることが肝要だ。
NECが提供する「働き方見える化サービス」とは
NECが先頃、働き方見える化サービスの最新版をクラウドサービスとして提供開始した。このサービスは、自宅や外出先で行うテレワークやオフィスにおける勤務状況のデータを収集し、可視化するものだ。PCの利用情報やスケジュールなどを集計して業務工数や業務負荷などを可視化し、業務プロセスの改善や生産性向上などに活用できるとしている。
今回の最新版では、従来のサービスを継承して機能強化を図った「スタンダード版」と、より高機能な「アドバンスド版」を用意した。
スタンダード版は「Microsoft Office 365」のスケジューラとの連携により、業務タスクを自動登録する新機能を装備。業務計画申請を簡素化できるようにした。アプリケーション別や業務タスク別に個人単位で集計ができるため、リソース管理やマネジメントにも貢献するという。さらに、顔認証ソフトとの連携により、勤務状況や在席状態も可視化できるとしている。
アドバンスド版はスタンダード版の機能に加え、組織単位でアプリケーションやファイルの利用状況、業務タスクや残業の状況を把握できる集計機能も装備。このサービスを活用することで業務傾向や課題を可視化し、俯瞰的に把握できるようになるという。【図参照】
今後は同サービスで収集した各種データを人工知能(AI)で解析し、さらに社員の生産性向上を支援する機能の搭載も計画している。
社員の成長実感につながるAI開発を
こうした働き方を見える化するツールは日本マイクロソフトなども提供しており、働き方改革が広がりつつある中で注目を集めている。ただ、こうしたツールを適用する際には、働き方改革の目的を見失わないようにすることが肝要だ。
では、働き方改革の目的とは何か。「業務の効率化」「生産性向上」「ワークライフバランスの実現」といった点が挙げられることが多いが、筆者がこれまで取材してきた中で、そうあるべきではないかと思った答えが「社員がそれぞれ成長を実感できること」である。
上記のようなツールの内容だけを見れば、社員は勤務状況の可視化によって評価されるのが当然の立場であるとはいえ、細かく監視されていることを不快に感じる人は少なくないだろう。それを解消するにはまず可視化した内容の評価制度を「減点」ではなく「加点」の仕組みにするべきである。それによって、社員のモチベーションアップを図り、「成長実感」へとつなげるのである。
働き方改革を推進する企業の経営者は、そうした視点を持って社員の成長実感に向けた取り組みを図っていただきたい。くれぐれも業務の効率化や生産性向上ばかりを追求するような「働かせ方改革」にならないように注意すべきである。
働き方の見える化には、今後AIがさまざまな機能に埋め込まれて活用されるようになるだろう。しかし、その目的を間違えるとAIは単に厳しい監視ツールになりかねない。そうではなく、社員の成長実現につなげるAIを開発してもらいたいものである。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2017/11/3 05:00)