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[ 科学技術・大学 ]
(2017/11/10 18:00)
建設費4割減、将来の延伸検討
岩手・宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地とされる次世代大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、当初の計画が見直され全長が約30キロから20キロに縮小されることが10日、分かった。カナダで開かれた物理学者らの国際会議で、同日までに計画変更が了承された。
ILCは約8300億円と見込まれる巨額の建設費が課題だった。計画変更で建設費は最大で4割削減される見通しだが、縮小によって出力は半分になり、当初期待された実験が困難になる可能性がある。計画を推進する物理学者らのグループは20キロの実験で得た成果を踏まえ、将来は30キロ以上に延伸も検討する。2021年の着工を目指し、各国政府と費用負担などの協議を進める。
ILCは地下に直線のトンネルを堀り、多数の加速装置を設置。電子と陽電子をほぼ光速で衝突させ、発生したさまざまな素粒子を観測する。万物に質量を与える「ヒッグス粒子」の詳細な分析のほか、宇宙誕生直後の高エネルギー状態を再現することで、宇宙の謎の解明を目指している。
建設候補地をめぐっては、北上山地と福岡・佐賀両県の脊振山地が検討され、物理学者グループは2013年に北上山地を選んだ。
一方、文部科学省から依頼を受けた日本学術会議は同年、日本が中心となって建設するべきか審議し、2~3年かけて検討するよう提言した。下村博文文科相(当時)は候補地も文科省として改めて検討する考えを示し、ILC建設に向けた予算措置のめどはついていない。
国際リニアコライダー(ILC)
日米欧の物理学者らが計画している次世代の大型加速器。地下100メートルに掘った直線のトンネル内で、電子と陽電子を光とほぼ同じ速度まで加速して衝突させ、飛び出す素粒子を観測する。ヒッグス粒子の発見で知られるスイスの欧州合同原子核研究所(CERN)の大型加速器は1周約27キロの環状だが、直線状のILCは、より精密に観測できるとされる。(時事)
(2017/11/10 18:00)