[ 政治・経済 ]

【電子版】独、戦後初の3党連立で産業のデジタル化に拍車 環境技術の研究・開発も加速へ

(2017/11/16 12:00)

  • 首相続投が有力視されるメルケル独首相

ドイツ連邦議会選挙で勝利したメルケル首相を擁するドイツキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)が、ドイツで第2次大戦後初となる3党連立政権の樹立に向けて動きだしている。CDU/CSU、自由民主党(FDP)、緑の党の3政党はいずれも、産業政策について、デジタル化の推進がドイツの競争力強化のために欠かせないとの認識を共有しており、連立政権が実現すれば、IoT(モノのインターネット)を活用して製造業の高度化を目指す「インダストリー4.0」といった国家主導の取り組みにも拍車がかかりそうだ。ただ環境・エネルギーの分野をめぐっては、FDPと緑の党の主張が異なるなど、3党が連立に合意するには難しさもはらむ。(編集委員・碩靖俊)

早ければ年末にも連立政権樹立

  • 9月24日のドイツ連邦議会選挙でメルケル首相率いるCDU/CSUが第1党に

CDU/CSU、FDP、緑の党の3政党の連立は各党のシンボルカラーであるそれぞれ黒、黄、緑を踏まえ、「ジャマイカ連立」と呼ばれる。各党いずれも11月半ばまでに連立政権の樹立に向け、予備会談の合意文書をまとめることを目指しており、それぞれ各党で承認されれば、連立に向けた交渉が正式に始まる。

その上で、連立政権の樹立に関する合意、各党での承認を経て、新政権が発足する見通しだ。スムーズに行けば、12月末に発足するとの見方も出ている。

バランスを取った政策のCDU/CSU、産業界寄りのFDP、環境保護に重きを置く緑の党といった具合に、各党の政治的な立場はかなり異なる。とはいえ「欧州連合(EU)統合の推進をはじめ、教育や研究・開発、デジタル化の推進は(3党が同じ方向を向いているため)合意しやすい分野」と、大和総研経済調査部の山崎加津子主席研究員はいう。

3党合意のカギ

環境・エネルギー政策、難民・移民政策は合意が特に難しいと見る。環境・エネルギー政策については、緑の党が、 地球温暖化防止を目指すパリ協定で約束した温室効果ガスの排出削減目標の順守を主張しているのに対し、FDPが企業の競争力低下につながる環境対策に反対の姿勢であるためだ。

ただ山崎主席研究員によると「(各党が)歩み寄る余地はある」。CDU/CSU、FDPともにパリ協定の合意を尊重するのに異論がなく、さらに緑の党もディーゼル車などの販売禁止と石炭火力発電の停止に関して、2030年という期限にこだわらないことを示唆しているという。

ドイツ鉄道やドイツ・テレコムといったドイツ主要企業約40社が新政権に対して温暖化対策をさらに加速させる共同声明を発表したことも、3党連立に向けて追い風と言える。独産業界にはドイツが環境対策先進国になることで技術革新を促し、企業競争力の向上につなげる思惑もあるようだ。

3党連立に関する交渉が決裂すれば、再選挙となる公算が大きい。ドイツはフランスとともにEUのけん引役としての役割を加盟国から期待されている。EU改革、難民・移民問題をはじめ、2018年夏で第3次支援が終わるギリシャの債務問題など、EUが抱える課題について、ドイツの選挙が終わるまで協議が先延ばしにされてきた経緯もある。それだけに今後の動向が各方面で注目されている。

(2017/11/16 12:00)

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