[ ICT ]
(2017/11/17 05:00)
あらゆるものがネットにつながるIoTの進展につれ、サイバー攻撃をはじめとしたセキュリティ脅威ののリスクがますます増大している。今回は最新情報からIoTセキュリティの行方を探ってみたい。
高い伸長率で推移するIoTセキュリティ市場
まずはIDC Japanが先頃発表した国内IoTセキュリティ製品市場予測から。それによると、2016年の同市場規模は前年比27.5%増の518億円。同市場の2016年から2021年までの年間平均成長率は19.3%を見込み、2021年の市場規模は1250億円になると予測している。【図1】
IDCでは、現状として製造機械の稼働状況の把握や遠隔制御などを目的としたユースケースが多くを占めており、製造工場内ネットワークや遠隔制御用ネットワークなどに対するネットワークセキュリティアプライアンス製品の導入が先行していると分析。
こうした用途では、信頼性や耐久性を備え、多様な機能を持ったセンサー/モジュールを数多く活用することが不可欠で、今後はセンサー/モジュールに組み込まれたセキュリティハードウェアモジュールの導入が進むと予測している。また、ソフトウェア製品では、あらゆる産業分野のさまざまなユースケースにおいて支出が加速していくと見ている。
4層からなるIoT環境に必要なセキュリティ
もう1つ、最新情報として取り上げておきたいのは、トレンドマイクロが先頃開いた事業戦略会見で説明していた「IoT環境に必要なセキュリティ」についてだ。それによると、同社ではIoTシステムの構成要素を「デバイス」「ネットワーク」「コントロールセンター」「データアナライザ」の4つのレイヤーとして捉え、この全レイヤーを対象に業種ごとに最適化したトータルセキュリティを提供していくという。そのうえで次のように説明した。
「IoT環境ではこれらの各レイヤーをまたいでデータが活用されている。IoTデバイスから収集されたデータはネットワークを通じてクラウドに蓄積され、クラウド上に蓄積された膨大なビッグデータはAI(人工知能)を用いて分析され、意味のある情報に変わる。その後、用途に応じて各デバイスに指示が送られ、それに従って各デバイスでアクションが起こる。このようなレイヤー間を移動するデータをわれわれは適切に守っていく必要がある」(トレンドマイクロの大三川彰彦副社長)
そして、IoT環境に必要なセキュリティとして、4つのレイヤーに基づいた【図2】を示した。キーとなるセキュリティ機能は「認証」「プライバシー」「脅威対策」で、それぞれに4つのレイヤーに必要な機能を記してある。これが、IoT環境に必要なセキュリティの内容である。
大三川氏によると、この図の中でトレンドマイクロ自体が手掛けるのは脅威対策で、認証とプライバシーについては「この領域を手掛けるパートナー企業との協業によって、トータルソリューションとして提供していきたい」としている。
同氏はIoTセキュリティについてこうも語っている。
「IoTの普及により、企業は消費者の情報を取得することで、より個々の消費者にカスタマイズしたサービスを提供できるようになる。その一方で、ヘルスケアや決済の情報など、より重要性の高い情報を企業が保有するため、これらが漏えいした際のリスクを踏まえたセキュリティ対策が求められる。企業においては、従来の情報資産の守り方から発想を転換するセキュリティ戦略が必要になるだろう」
筆者も同感である。最近では、一段と手口が巧妙化して検知が難しくなったサイバー攻撃から法則性や特徴を見出して攻撃者を特定し、素早く防御するセキュリティ技術の開発が進んでおり、これにAIを活用する取り組みも行われている。だが、AIは攻撃者も活用しており、近い将来、サイバー空間でAI同士の攻防戦が現実となる可能性が高まってきている。その主戦場がIoTになることは間違いなさそうだ。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2017/11/17 05:00)