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[ 自動車・輸送機 ]
(2017/11/20 05:00)
≪アイドリングストップ車用鉛蓄電池「Tuflong G3」≫
【“未知の領域”】
「『距離無制限で38カ月の製品保証』という目標には、正直不安しかなかった」―。日立化成電池技術開発センタ自動車電池開発部の木村隆之主任研究員は、3番目の技術世代を意味する「タフロングG3」の開発をスタートした2011年当時をそう振り返る。同社従来品の製品保証は3万キロメートルの距離制限付で18カ月にとどまり、G3が掲げる性能には遠く及ばない。まさに未知の領域だった。
アイドリングストップ機能を持つ自動車で使うバッテリーでは一般に、充電時に発生する硫酸イオンが重力で底部に沈み込む現象が起こる。こうなると電解液に濃淡ができてしまうため、濃度が薄いバッテリー上部に放電反応が集中。結果として正極上部と負極下部の劣化が進みやすくなり、バッテリーの寿命が短くなる課題があった。G3開発はまず、この問題を改善するところから始動した。
正極と負極の劣化を抑えるには、機械的な強度を引き上げるのが近道だ。ただ部分的な補強となると技術的にかえって難しいため、選択肢は正極・負極全体の設計を見直す以外にない。だが、木村研究員は「それではムダが多すぎる」と一蹴。「硫酸イオンのムラを解消する技術を追求することが差別化につながる」と判断し、これまでと異なる切り口で挑む方針を固めた。
【イオンを分散】
実は、イオンの沈降を抑えることは「特に高い壁ではなかった」(木村研究員)と明かす。産業用の制御弁式鉛蓄電池で培った、ガラス繊維不織布の知見を生かせると考えたからだ。日立製作所研究開発グループ材料イノベーションセンタの原田素子研究員とのタッグで、繊維層も最適化。その読み通り、セパレーター(絶縁材)と負極の間に設けた不織布でイオンを分散させる成果を引き出した。
【顧客が評価】
むしろ心配していたのは、電極間を動く横移動にまで悪影響を及ぼす“副作用”だ。動きが鈍くなれば、バッテリーの充放電性能は一気に低下する。木村研究員らは連日、イオンの動力学シミュレーションと分析技術をフル活用。繊維層への表面処理という答えを見つけ出し、長い製品寿命と高い充放電性能を両立したバッテリーを仕上げた。「思い切ったことをしましたね」というユーザーの高評価も得ているという。
(堀田創平)
(2017/11/20 05:00)
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