[ ICT ]
(2017/12/16 13:00)
(ブルームバーグ)推定3億ドル(約340億円)と2000ビットコインを残して母国ロシアを去り、イランではテロに絡む罪で欠席裁判に直面。米国政府が目の敵とする内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ氏はその技術を認め、モスクワに到着した米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン氏には仕事を提供した。この人物、パベル・ドゥーロフ氏が手掛ける暗号化メッセージサービス、テレグラムが爆発的な広がりを見せている。
テレグラムは相手の名前や電話番号を知らなくても通信が可能。多くの人がそれぞれ違う基本ソフト(OS)を使っていてもチャットやさまざまな種類のファイルを共有できる。イランの4000万を含む全世界で約1億8000万のユーザーを抱え、ユーザー数は1日50万ずつ増えているという。
ロシア最大のソーシャルネットワークだったVKを政権寄りの富豪に2014年に売却した後、ドゥーロフ氏は兄で著名な数学者・プログラマーのニコライ氏と共にロシアを出国。各国を転々としつつ、テレグラムのソフトウエアに修正を加えてきた。サーバーの所在地や従業員の多くの名前は秘密で、ドゥーロフ氏はハッキング不可能だとしている。
こうした特徴のためテロにも利用された。インターネットトラフィック全体の約4割をテレグラムが占めるとされるイランでは、テロリストや人身売買、小児性愛者などに利用されているとし、国外にいるドゥーロフ氏の罪を問う事態となっている。
33歳のドゥーロフ氏は今、ドバイにオフィスを構える。現地でインタビューに応じた同氏は、極端なコンテンツを根絶するための検索機能を開発していると明らかにしたものの、プライベートなデータへの第三者のアクセスは今後も一切許さないとの姿勢を示した。「好奇心に突き動かされている」とテレグラム開発の理由を語り、「イランのような国で最も人気あるソーシャルメディアのプラットフォームを運営するのはどのようなものか、とても興味がある」と打ち明けた。
各国を渡り歩いていたのは米連邦捜査局(FBI)などの法執行機関や情報機関からの採用の誘いをかわすためでもあった。ドゥーロフ氏はテレグラムをチャリティーと見なし、来年から同事業を収益化するものの、事業の拡大に十分な範囲にとどめると説明。これまでもシリコンバレーを拠点とする大企業の数社から買収案を提示されたことがあるが、今後もそのような提案は受け付けないと述べた。買収を提案してきた企業名は明かさず、テレグラムの価値を30億-50億ドルと見なす評価だったと語った。
「200億ドルでも売却しない。これは一生保証する」と言明した。
(2017/12/16 13:00)