[ ロボット ]
(2017/12/22 05:00)
東京電力福島第一原子力発電所で高濃度放射性物質を含む汚染水の除去が進んでいる。2号機と3号機の復水器に残っていた汚染水をロボットでくみ取り、約400兆ベクレルの放射性物質を処理する。これは建屋内滞留水の放射性物質全体の約2割に当たる。作業に当たるのは機能を最小限に絞り込んだシンプルなロボットだ。廃炉作業は着実に進んでいる。(小寺貴之)
【2割削減】
「放射性物質を2割減らせる効果は大きい」と東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは説明する。復水器はもともと高温の蒸気を冷却して液体に戻す装置だ。原発事故直後に貯水タンクが整わない中で汚染水を一時避難させたため、原液に近い高濃度の汚染水が残っており、2号機と3号機の復水器に残る汚染水除去を進めてきた。
施工にあたり太平電業が水抜きロボットを開発した。復水器の内部には作業員が入れないため、4輪の遠隔操縦ロボがホースを運び、復水器の隅の穴からホースを底まで垂らして汚染水を吸引する。
【力強く走行】
ロボットの見た目はシンプルで武骨だ。アームや外装などはなく、作業確認用のカメラと水位計、ホースなど作業に必要な機能だけで構成する。
太平電業福島事業所の斎藤秀之主務は「当初はクローラー方式も検討したが、堆積物が詰まるリスクなども考慮し、最終的には車輪を採用した」と説明する。車輪は車体に対して最大限大きく設計した。水面と車体の距離をできるだけ離して防水範囲を最小限に抑えた。そして段差の踏破性や推進力を上げている。車輪の回転速度は落とし、ゆっくりだが高トルクで力強い走行性能を確保した。これによって長いホースを引き回せる。
ロボットを投入する前の初期調査では復水器に堆積物があることが確認された。そこでブルドーザーのような排土板を取り付けた。
ただ投入前の実験と訓練で排土板がなくても走行できることを確認。「できる限りシンプルな形を優先」(斎藤主務)し最終的に排土板は外した。
【700トン移送】
開発期間は約6カ月。復水器内の多くの制約条件をクリアし、各復水器約340トン、合計700トン近い汚染水を移送する。11月に2号機復水器、12月15日に3号機復水器の水抜きを無事終えた。放射性セシウムの濃度は1リットル当たり4億―5億ベクレルだった。汚染水を浄化装置で処理すれば一段落する。
機能を突き詰めたロボットはシンプルで派手さはない。ただ着実に仕事をこなした。斎藤主務は「この成功体験こそが今回の最大の財産」という。
(2017/12/22 05:00)