[ オピニオン ]
(2017/12/26 05:00)
日本の長期のエネルギー戦略は、原子力政策を抜きには成り立たない。旧式の原子力発電所を新型に置き換え、より安全性を高める選択肢を含め、広範な議論を始めるべきだ。
原発置き換えを検討すべき環境は整いつつある。関西電力は大飯原発(福井県おおい町)1、2号機の廃炉を決めた。設備年齢が40年間に近づいている上に、東日本大震災後の新基準への適合が困難と見込まれるためだ。運転延長も不可能ではなかったろうが、安全性・コスト面を優先した判断だろう。
同社は美浜原発(福井県美浜町)のうち旧式の1、2号機の廃炉も決めている。これにより政府がエネルギー基本計画で目標に定めた原発の構成比率の達成は難しくなる。一部には、廃炉後の敷地に新原発を建設する狙いだとの見方がある。
一方、東京電力は建設中の東通原発(青森県東通村)を、他の電力事業者と共同で運営する構想を明らかにしている。隣接する東北電力を念頭に置いたものとみられる。東電首脳は「新たな原発のあり方を試すチャンスにしたい」と話す。
政府は公式には、原発の長期縮減を前提に、既存原発に限って再稼働する方針を掲げてきた。一方、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の順守には、化石燃料の利用を大幅に減らさなければならない。
火力発電と原発の双方を再生可能エネルギーで代替するのは技術的にも発電コストの面でも、またエネルギー安全保障の面でも非現実的だ。当分は二酸化炭素排出量の少ない原発を残し、運転する必要がある。
その場合、老朽化した小型原発を改修して使い続けるより、安全性を高めた新型原発を建設し、集約していく方が有利なことは自明である。
福島第一原発事故の被災者は生活再建の途上にあり、国民の一部にも脱・原発論が根強くある。広く理解を求めるために、原発置き換えで安全性を高めることを明確にしなければならない。それでも実現には時間がかかるだろう。まずは政府が、正面から議論を始めるべきだ。
(2017/12/26 05:00)