[ オピニオン ]
(2018/1/2 08:00)
2018年の日本経済は、好調な企業収益や米国や中国をはじめとする堅調な海外経済に支えられて、緩やかな成長を持続するものとみられる。20年の東京五輪・パラリンピックを控え、競技場やホテルなどの建設需要がピークを迎えて設備投資が本格化することも成長を押し上げる要因となろう。
加えて、株高による消費マインドの改善や雇用・所得環境の持ち直しによって個人消費が力強いものになれば、企業部門と家計部門のバランスの取れた、より高い経済成長が期待できる。
昨年12月に発表された日銀短観では大企業製造業の業況判断DIがプラス25と5四半期連続で改善し、11年ぶりの高水準となった。また月例経済報告では「(景気は)緩やかな回復基調が続いている」との判断を据え置いたが、設備投資と生産の判断を上方修正している。こうした良好な経済指標を踏まえて、政府は18年度の経済見通しで実質経済成長率を1.8%とした。これは民間シンクタンクの見通しをはるかに上回る、5年ぶりの高い伸びであり、政府の期待の大きさを物語っている。
現在の景気回復局面は12年12月に端を発しており、すでに高度成長期の「いざなぎ景気」の58カ月を超えた。このままいくと、1年後には02年2月から73カ月続いた戦後最長の記録を更新することになる。記録更新の可能性は小さくない。
景気回復が長期化しているものの、消費者物価指数の上昇率は政府・日銀が目標とする2%に遠く及ばない。安倍晋三首相は「生産性革命こそがデフレ脱却への確かな道筋になる」と強調し、12月にまとめた2兆円規模の経済政策パッケージの柱の一つに生産性革命を据えた。産業界に対しては3%の賃上げを要請しており、3%以上の賃上げを行った企業への法人税減税を実施する。こうした賃上げが消費拡大、企業収益拡大といった好循環を生むかどうか注目される。また中小企業には17年度補正予算でIT機器導入、サービス・製品開発などの設備投資を補助し、設備投資の押し上げ、生産性向上を図る。
経済成長の柱が企業部門だけに、海外経済の下振れがリスク要因となる。株価が高値圏で推移している米国では大型減税が可決され、さらに株価が上昇することが予想される。このためバブルを懸念する声は高まっており、金利引き上げの時期や上げ幅次第では米国景気が後退する。そうなれば、日本企業への影響も計り知れない。米国の利上げは新興国からの資金流出を招き、新興国経済に打撃を与えるため、懸念材料といえる。このほか、北朝鮮情勢や中国の景気動向などにも注意が必要だ。
景気回復の長期化により、有効求人倍率は1.56倍、失業率は2.7%を記録するなど、雇用情勢の改善はめざましい。人手不足は業務遂行の妨げになり、企業業績に悪影響を及ぼす可能性もある。一部業種ではそうした傾向がみられる。企業は賃上げや人材育成を進めて、人材不足を克服してほしい。企業が賃上げに協力して、個人消費の増大、企業収益の拡大といった好循環が実現すれば、さらなる経済成長の押し上げにつながるのは間違いない。
(川崎一)
(2018/1/2 08:00)