[ オピニオン ]
(2018/1/25 16:30)
自動車の電動化が世界の潮流になってきた。内燃機関自動車に比べ、大気汚染や気候変動の抑制、安全性の向上などの面では好ましい。だが “燃料”である電気の需要が増える、内燃機関に存在した部品がなくなる問題もある。サプライヤーにとっては仕事自体が消滅しかねない。
米カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV)規制が2018年から強化された。英仏が40年までに化石燃料自動車の販売禁止の方針を打ち出し、この方向は欧州全域に広がりそう。自動車の巨大市場になり、排気ガス汚染に悩む中国も新エネルギー車規制(NEV)を来年から適用する方針だ。
カリフォルニア州のZEV規制強化は対象となるメーカーが現行の6社(日本勢はトヨタ自動車、日産、ホンダ)から12社(同マツダ)に拡大。また昨年までZEV対象だったハイブリッド車などが対象から外れ、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)だけがZEV対象になる。
さらに、ZEV販売比率が14%から16%に引き上げられた。トヨタとマツダ、デンソーの3社が昨年9月にEV技術の共同開発会社「EVシー・エー・スピリット」を設立したのはこうした背景がある。
現状では自動車全体に占めるZEVのシェアは1%にも満たないが、今後、増えていくことは確実だ。EVに二酸化炭素排出量の多い石炭火力で電気を供給するのでは意味がない。ひとたび事故が起これば大惨事となる原子力発電を増やすことも現実的ではなく、再生可能エネルギーや水素による発電の拡大が必要になるだろう。
部品に関してはバッテリー、センサー、エンジンコントロールユニット(ECU)、アクチュエーターなど電子・電気系はZEVで増える。電動車両のこの分野ではカーエレクトロニクスで成長したサプライヤーが強みを発揮している。逆にタンクなどガソリンや軽油といった燃料を扱う部品やエンジンとその周辺の部品、触媒などの排気ガス系の部品は不要になると思われる。
自動車サプライヤーの動向に詳しい立命館大学の佐伯靖雄准教授は「近年、電動車部品の分野ではボッシュやコンチネンタルといったドイツ系部品メーカーの参入が増えている。自動運転の要素技術でも両社が上位に食い込んでおり、日本でもドイツ系メガサプライヤーの台頭が著しい」という。
自動車産業は完成車メーカーを頂点に1次、2次、3次…のサプライヤーが広い裾野を形成する日本で最も有力な産業である。自動車技術の変化によって、この構造に変化がみられつつあるのかもしれない。裾野を形成する部品サプライヤー企業は将来をしっかり見据えた事業展開が必要になる。
(山崎和雄)
(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)
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(2018/1/25 16:30)