[ 金融・商況 ]
(2018/1/29 18:00)
日本時間26日午前2時57分、仮想通貨取引所コインチェックがハッカー攻撃を受け、顧客が保有する仮想通貨「NEM(ネム)」約5億ドル(約540億円)相当が盗まれ、取引所からのデジタル通貨流出としては史上最大級の問題が発生した。
東京に本社を置くコインチェックの経営陣は同日夜、急きょ記者会見を開き、この問題を発表。週末を迎えていた世界中が反応した。日本では金融庁が仮想通貨取引事業者の登録制度を導入して間もないが、韓国では仮想通貨取引を禁止するかどうかを巡る議論が展開されており、今回の流出を受け、当局による規制強化を求める声が強まる可能性もある。
ビットコインなどの仮想通貨は26日、売られた。だがコインチェックが自己資金で顧客資金の一部を返済すると表明したこともあり、仮想通貨の価格はその後、持ち直した。
市場ウオッチャーらによれば、セキュリティーの不備を巡る懸念は続く公算が大きい。このため、インターネット経由で取引相手を結び付けるピアツーピア(P2P)トレーディングは一極集中型のプラットフォームに頼らない方向に一部の投資家を向かわせる可能性があるという。
仮想通貨技術を支えるブロックチェーン(分散型デジタル台帳)の専門家らを対象にしたソーシャルネットワークを運営するインドース(シンガポール)の共同創業者デービッド・モスコウィッツ氏は「すぐに2つの影響が出るだろう。1つは当局による規制強化で、もう1つは中央集中型でないトレーディングが提供する強みへの認識の深まりだ」と述べた。
2014年には東京の仮想通貨取引所マウントゴックスからの流出事件もあった。デジタル通貨が大きく値上がりする中で、プラットフォームがハッカー攻撃の対象になりやすくなっている。ほとんどの仮想通貨業務が規制外であることから、多くの機関投資家は仮想通貨取引を敬遠している。
PwCのフィンテック・レグテック責任者ヘンリ・アルスラニアン氏(香港在勤)は「世界の仮想通貨コミュニティーが今直面する最大級のリスクの一つがこうした大規模なハッキングだ」と語った。
レグテックは英語のレギュレーション(規制)とテクノロジーを組み合わせた造語。コインチェックがNEM残高急減を把握したのは26日午前11時ごろで、最初の流出から約8時間が経過していた。(ブルームバーグ)
(2018/1/29 18:00)