[ オピニオン ]
(2018/2/6 05:00)
2018年の春季労使交渉(春闘)が本格スタートした。安倍晋三首相が要請する賃上げ率3%台に乗るかが焦点だ。同時に、雇用の大部分を占める中小企業と非正規労働者の底上げにも配慮が必要だ。
連合傘下の各産業別労働組合は9日の基幹労連を皮切りに、経営側に要求を提出する。“官製春闘”は5年目だが、これまで2%台の賃上げ率にとどまっている。
連合は今春闘でのベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた統一賃上げ要求水準を「4%程度」に設定した。ベア要求水準はここ数年と同様、2%程度だ。ただ最も高い賃上げ率は15年の2・38%。定昇分を除いたベアは1%に達しない。3%台の賃上げへの道のりは遠い。
依然として経営側には根強いベアへの抵抗感がある。ボーナスは業績連動の名目で増減しやすいが、一度決めた月例賃金は事実上、調整できず、社会保険料や退職金も連動して上がるケースが多いため、大手企業の労組は長らく雇用安定を最優先してベア要求を断念してきた。
ただ経団連が政府に配慮してベア容認の姿勢を続ける中で、経営側にもわずかに変化が生じている。大企業と中小企業はバリューチェーンやサプライチェーンでつながり、非正規社員の比率も雇用者全体の4割に達している。好業績を背景に、大企業が抱える内部留保を中小や非正規社員の底上げに配分することも必要だろう。
また今春闘と並行して「同一労働同一賃金」や罰則付きの残業規制の導入など、労働基準法改正案が通常国会で審議される。各企業の労使交渉の場では「働き方改革」を先取りした議論が求められる。
大手のベアと物価上昇率の相関には不明確な部分もあるが、賃上げは労働者のやる気を引き出すし、労働力確保の点でも有利に働く。政府にはむやみに賃上げを求めるだけでなく、中小が適正な価格で取引できるルール整備や、人工知能などを活用した「第4次産業革命」を後押しする「生産性改革」を進める政策が望まれる。
(2018/2/6 05:00)
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