[ オピニオン ]
(2018/3/14 05:00)
株価や雇用指標が着実に改善する中、政府が企業の春の労使交渉(春闘)に介入する異常な「官製春闘」は、出口を探る時期に来ている。
2018年春闘は、きょう労働側が前半のヤマ場と位置付ける集中回答日を迎える。大手企業の経営側は、おおむね前年並みかそれ以上のベースアップ(ベア)を回答する見込み。中小企業の交渉はこれからだが、全体として安倍晋三首相が要望している「3%の賃上げ」の達成は微妙な情勢だ。
企業が着実に利益を上げ、また第4次産業革命などのイノベーションによって生産性を高めた果実を従業員に還元することは重要だ。そのためには企業それぞれが内部留保を積極的に投資に振り向け、企業家精神を発揮することが望ましい。
安倍政権が「官製春闘」を続けて来たのは、実質賃金の引き上げで生活が豊かになったことを国民に実感してもらい、消費を拡大して経済の好循環を回すことが狙いだ。ただ、その背景には企業投資の伸び悩みに対する政権の不満があった。産業界は「既存ビジネスに安住せず、イノベーションを加速せよ」という政権のメッセージとして受け止めている。
その「官製春闘」も5年目。経済環境は大きく変わった。消費者物価の上昇は思うに任せないが、それでもデフレとはいえないまでに状況は改善した。株価は着実に高まり、失業率もバブル期以来の低い水準を記録している。
むろん中小企業の景況は楽観できず、まだら模様が続いている。いわゆる非正規労働者の処遇改善も道半ばだ。また運輸や建設などの業種を中心に人手不足が深刻化し、長時間労働の問題が顕在化している。こうした課題に政府が引き続き対処するのは当然だろう。
とはいえ、それが異常な「官製春闘」をいつまでも続ける理由にはなるまい。このままでは企業の収益力をベースに労使が対話する慣行までゆがめられてしまう。政府は経済政策の成果を見極め、官製春闘からの出口を探ってもらいたい。
(2018/3/14 05:00)
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